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泣いた悪猿47
「うだつの上がらないまま、あの子と退屈で平凡な生を歩む、か。羨ましいくらいに幸せね、アナタ」
皮肉を混ぜた平林の口ぶりに、永山は唇を尖らせた。
「平凡かもしれないが、退屈じゃあない。あいつの笑顔を見てるのは、なんか、面白い」
永山のわかるようなわからないような言い回しに、平林が笑った。
「あはは。……安心なさいな。カンキチさんには、ワタクシの方からテキトーに言っておくから。イカレ爺はまた発狂して、舌噛んで死ねだとか喚くだろうけど、どうでもいいわ。いっそ脳の血管切れて死んじゃえばいいわよ馬鹿ジジイ」
「滅多なことをいうな」
平林の意外な発言に、永山の方が挙動不審になった。平林が教団に対し忠誠が低いことを、永山は始めて知った。
「しかし、恩に着る。お前も色々と大変だろうに」
おそらく、近々地球市民の会は壊滅する。永山は何となくそう思った。
「恩に着てくれるなら、ユウコちゃんのことは絶対に幸せにしなさいよ。でなきゃ、ブッ殺してやるんだから」
平林の言葉は、あの死神のことを思い起こさせた。
「そう言うのは、お前が二人目だ……」




