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泣いた悪猿46

地球市民の会はその黒い噂に違わず、およそ人の持つ倫理に反したことを日常的に行っている。法的にはグレーゾーンを突くことが多いため、実際の犯罪検挙数はさほどでもない。が、当然のことそのようなことを平然とできる凶悪な人間は限られてくる。つまるところ地球市民の会は年々人材不足により追い込まれているのだ。以前は干したはずの永山を復帰させようという動きが生まれることは、予想していた。いや、予想していたどころか期待していた時期さえあった。

もし一年前と状況が変わっていなかったなら、平林の提案を二つ返事で了承していただろうに。コウタの誘いのことも、ふと思い出した。考え次第では、永山に追い風が吹いていた。コウタと組み飛騨派を討ち、平林に連れられ宗教幹部に返り咲く。マシラとしての出世街道の花道が目の前に開けていた。だが、永山の意志は既に決まっている。


「……でもアナタ、帰っててくる気ゼロよね」

永山が答えるより早く、平林は正解を引き当てていた。永山は済まなそうに苦笑いして、首を縦に振った。マシラの出世街道を辿れば、ユウコの笑顔を消すことになる。頭の悪い永山でもそれはわかった。そんなのは御免だった。



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