泣いた悪猿43
かつて宗教幹部であった時代、永山はこの男と組んで仕事をしたことがある。
地球市民の党は国民に対するイメージ戦略のために、様々な策略を講じた。カルト教団の政党という黒いイメージを打ち消すことが目的だ。
子宮癌ワクチンの無料化というのが、その一つだった。タダで病の予防をできるようにしたのだから、誰もが地球市民の党を見直すはずだった。が、事はそう上手く転がらなかった。政策を急ぐあまり、本来必要なはずのワクチンの安全検査をいくつもすっ飛ばしたのが裏目を引いた。副作用等のリスクを充分に検分せずに出回ったワクチンのせいで、不妊症になる女性が次々と現れたのだ。党のイメージアップどころか、ますます地球市民の会に対する世間の風当たりが強くなってしまったのだ。
永山と平林は数人の部下と共に、主にインターネットで行われる教団バッシングを火消しする任を負った。
結果は惨憺たるものだった。
悪名高いカルト教団は国民に蛇蝎のように嫌われているため、地球市民の党を責め立てる人間は大量にいた。永山と平林たちだけでは人数が圧倒的に足りなかった。地球市民の党を詰るコメントには何人もの賛同する返信が寄せられ、永山たち擁護者のコメントには「黙れ信者」「地球市民乙」と、侮蔑と罵声ばかりが寄せられた。




