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泣いた悪猿40
それにしても気になるのは、あの死神でなければ誰が永山を探しているのか、だった。
いつも通り唐揚げの香りを目指し帰宅してドアノブを開けるまで、それは大したことではないようにも思えた。あの死神でさえないなら、どんな化物に狙われようがマシに思えた。ドアを開け、ユウコのものではない靴を玄関を見つけるまでは。
永山の体中の毛穴が開いた。体内に得体の知れないものが入った、そんな気分だった。
『お前を名指しで探しているやつがいる』
どうして、気付かなかった?
そいつが自分の居場所を突き止める危険があることに。ユウコに辿り着く可能性があることに。
世界でたった一人の女に魔の手が伸びることに。
「ユウコっ!!!」
もし刺客が彼女に指一本でも触れていたら、この世に生まれたこと自体を後悔するほどの目に遭わせてやる。
そのくらいの闘志を胸に、永山は跳んだ。
一足飛びに居間まで跳び、すぐさま攻撃に転じられるよう身構えた。
鉤爪を露わにし背筋を隆起させる。一秒でも、一瞬でも早く侵入者に一撃を食らわせたい。
そう考えたことが最悪の事態を避けるのに、実際に役立った。




