泣いた悪猿36
コウタの言うことは尤もだと、永山は同意した。
かつて、マシラは名門に数えられた眷族だった。カンパニーというのはマシラを含む国中の邪鬼を束ねている組織だ。マシラの族長はカンパニーの有力幹部の座を約束されるという、最上位の待遇を受けていた。
マシラの歴史に泥を塗ったのは、現在マシラの長に居座っている飛騨申兵衛だ。何が気に食わなかったのか知らないがカンパニーの最高指導者である狐の女王と仲違いし、あろうことか人間との共存の道を探すことを提唱しだした。
族長を名乗るだけあって、老いてなお強力な力を誇る飛騨老人に、表立って逆らうものは少ない。が、本音を言えば邪鬼としての生き方を根本から否定する老害の考えに不満を持つ仲間はかなりいると永山も思っている。
「それで、だ。あのクソジジイをぶっ殺してやりてえ仲間を集め中なんだ。やっぱ多いぜ、オレたちみたいに爆発寸前のヤツは。まだ慎重に信頼できそうなヤツ選んでるけど、案外半分くれえは同じように考えてるヤツいるだろこれ」
コウタの考えは、笑ってしまいそうになるほど永山と同じだった。いつか、こんな日が来るような気がしていた。不満分子が数を集め、マシラの反乱の狼煙が上がる日が。




