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泣いた悪猿35
あくる日
チケット切りの仕事の後、永山は珍しく真っ直ぐ家に帰らなかった。
懐かしい顔がクラブを訪れたからだ。
檜山幸太夫
コウタの愛称で呼ばれる、永山が高谷山で首俵と組んでいた時代の仲間だ。
さほどの時間はとれないことを告げ、永山は近くのカフェに佐渡を誘った。コウタは不満気な表情を隠さなかったが、渋々ながらに承知した。
「どうした兄弟?久々の再開だってえのに、随分と御機嫌ナナメじゃねえか。何かあったか?協力できることなら、何だってしてやるぜ」
アイスカフェオレを二つ注文して席についた永山は、不機嫌な元相棒の愚痴でも聞いてやるつもりでいた。
「……はっ。御機嫌ナナメか、まあ御明察の通りってヤツだが……」
コウタは苛立ちを隠さずに、目の前の飲み物に目もくれずに吐き出した。
「気に入らねえも何も、最悪なんだよ。オレたちはマシラだ。世が世なら、“業界”にも一目置かれた、力と知恵を兼ね備えた有力な一門じゃねえか。なのに、何なんだよこの有り様はよ?」




