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泣いた悪猿③

だがしかし、目視範囲外からでも人ならぬものがわかるのは敵も同じようだ。殺戮者の臭いは後ろからついてきていた。

追っ手を()くべく、永山は幾度も角を曲がった。わざと臭いのきついゴミ捨て場を、鼻を(つま)みながら通ったりもした。臭いを消すためにドブ川に敢えて入ったりもした。が、追跡者は一歩も違うことなく永山を追ってくるのだ。しかも歩くのが妙に速く、じわりじわりと距離は縮められていった。

焦燥にかられた永山は、もはや人目も気にせず走り出していた。さすがに距離はいくらか稼いだが、それも敵の掌の内であることにやがて気付いた。人通りの多い繁華街から、シャッターの閉まった寂れた商店街に追い込まれている。わざと人の少ない地域に誘導して、安全に料理しようという意図が見えていた。


永山は決断した。このまま逃げても、殺されるのは時間の問題だ。戦って勝てるような相手ではないことは、すぐさま判断できた。相手は一人のはずなのに、まるで獅子の群れに囲まれたような感覚に陥らされていた。訳あって体力を落としている永山には、勝ち筋のカの字も見えない。いや、体力が万全であった一年前であっても、あれほどドス黒い殺気を放つ怪物に勝てるはずがなかった。もし永山が助かる方法が一つでもあるとしたら、それは“交渉”以外にありえないのだ。

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