泣いた悪猿27
永山は唐揚げを頬張りながら、目の前にいるユウコを見つめた。納得いかなそうに眉を顰め、頬を膨らませて永山をじっと見つめている。死神は彼女と面識がない。にもかかわらず、死神は彼女のために永山を逃した。どうして接点すらない彼女のために死神が我慢する必要があるのか、皆目見当がつかない。
「うまそうに食いやがって、も~。本当に大丈夫なのかトウジ君?」
ユウコは口ではそう言いながら、唐揚げに手を伸ばした。永山は知っている。人間は嘘吐きだ。彼女だって例外じゃない。ユウコは疑念を口にしてはいるものの、それは解け始めている。本当に心配だったら、ユウコは目の前の飯にありつこうとなどしない。ユウコはそういう女だからだ。
「むしろ何を心配しているのか、オレにはわからない」
永山は嘘を嘘で返した。ユウコのしかめ面の理由はわかっているつもりだ。
「生意気な口ばっかだなあ。トウジ君は本当にトウジ君だなあ」
ユウコの声から緊迫感が抜けていくのがわかった。唐揚げをもう一つ、指先でつまんで口に放り込んだ。
「ユウコ、それは行儀が悪い行為なんじゃなかったか?」
「私はわかってやってるから、いいんです~」
永山が言い分はすぐさま意味不明な理屈で却下される。しかめ面は本気ではなくフェイクだ。いつもの二人の遣り取りが戻ったことに、永山は安堵した。




