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泣いた悪猿25

昔読んだ本にこんなことが書かれていた。

“人は産まれながら人間ではない、人間になっていくものだ”と。

人間が人間たりうるには、教育と環境が必要なのだ。赤ん坊の頃にジャングルで遭難して狼に育てられた子供の話がある。狼に育てられた子供は狼のように生き死んでいったという。

この人も似たようなものなのだ。遺伝子的に間違いなく人間として生まれたものの、人間らしさとは何たるやを学ぶ機会に恵まれなかったのだ。彼に人間として大切なものを教えてやれるのは彼女だけなのだと、使命に近いものさえ感じていた。

永山も彼女の努力に報いるかのように、僅かずつだが人間らしく振る舞うようになってきた。まだまだお互いに暗中模索の部分が多いが、いつかは当たり前が当たり前になる日が訪れるとユウコは信じていた。

今でこそ心配するユウコの気持ちすら汲み取れず、唐揚げの方に気が行ってしまう体たらくだ。が、逆にいえばこれは前進の意志があるがゆえの過ちだ。実に信じがたい話だが、永山は本当に唐揚げの心配をしていると思ったのだ。呆れ果てるほど低次元で、永山なりに人間たることを学んでいる最中なのだ。


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