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泣いた悪猿⑳
「おいエテ公。エテ公だからわからんだろうが、どうせエテ公なんだからわからないまま、言われたことだけ覚えておけ。エテ公はエテ公らしく、エテ公みたいに覚えておけ。
お前の女は、お前の命綱だ。お前が女と切れたときが、貴様の命が切れるときだ。理由は言わん、どうせエテ公なんだから懇切丁寧に教えてやってもわからんだろう。エテ公らしく、余計なことを考えずにエテ公みたいに言われたことを忠実に守っておけ」
死神の怒りが冷めたわけでもないことは、その侮蔑しきった言い回しからもわかった。彼は永山を憎んでいるだけではなかった。穢らわしいほどに下等な、あたかも害虫のような生物として見下しているのがありありとわかった。それだけに、永山を見逃す理由がわからなかった。
死神はタバコに火をつけ、煙をフッと永山に吹き付けた。吐き気を催すような酷い臭いに、横になったままの永山は激しく噎せ込んだ。吸うだけで体力を奪われるような、毒ガスのような煙だ。
それを最後の仕打ちに、死神は永山を置いて去っていった。酷い目に遭わされたのも事実だが、生還できること自体が奇跡なのも事実だ。なぜ生還できたのか考えながら、永山は傷めた体を引きずり帰路についた。が、答えは出ないままアパートの前まで辿り着いた。




