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泣いた悪猿⑮

その日以来、首俵とは御無沙汰だ。あれから十余年、いい加減に首俵の怒りも消えているだろう。叶うものならまた徒党を組んでみたいものだ……


と、ノスタルジーに浸ったのも束の間、永山を再び死の恐怖が襲った。ユウコのことを口にして消えたはずの男の殺気が復活したのだ。いや、前よりいっそうドス黒い炎となって永山を焼き尽くそうとしていたのだ。



永山は吐血した。あまりの素早い動きに、何をされたのかも理解できなかった。それが腹を蹴飛ばされたのだとわかるのに、一拍のタイムラグを要した。

「お前……そうか。あのとき、高谷山にいた一匹だったか……」

男の放った言葉の意味が、今度こそ即座に解された。


こいつは、あの小僧だ


当時は十歳かそこらだった、高谷山で食った子供。永山たちが狙っていた高僧たちをまんまとかっさらっていったという小僧が、成長して永山の前に立っているのだ。この男は死神だ、と永山は思った。マシラを皆殺しにするために存在している死の神なのだ。

マシラを皆殺しにするかのような行動も納得がいった。首俵とその仲間、つまりは永山たちに対する復讐こそがこの死神の狙いなのだろう。


今度こそ終わりだ


永山は観念した。体中の水分が全て膀胱に集中したかのような多量の失禁とともに悟った。反撃はおろか、逃げようとさえ思えなかった。


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