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泣いた悪猿⑫

その瞬間、男の手が止まった。

「ユウコ……誰だ?」

刃は永山の目の前で止まっていた。不思議な質感の刃物だ。金属製かと思いきや、木や獣骨に近い素材だ。退魔師と呼ばれる連中は霊力を高めるために生体由来の素材で武器を(こしら)えると聞いたことがあった。今話の際だというのに、永山はどうでもいいことが気になった。今話の際だからこそ、現状の解決に何ら関係ないことが気になったのかもしれないが。


「オレの女だが……知ってるのか?」

永山は頓珍漢な受け答えをした。死の間際の緊張感が頭を鈍らせたといえば、そうかもしれない。だが永山の迷言を生み出した最大の要因は、どうして男が動きを止めたのかわからず混乱したからだ。

「知るか。お前の帰りを待つ人間がいるというのか?聞いているのはこっちの方だ。答えろ」

男は口振りこそ相変わらず乱暴であったが、永山にはわかった。先程までの殺意に渦巻いていた男の眼が、サングラスの奥に光っていた眼光が明らかに変わっていた。

「……ああ。ユウコはオレの帰りを……待ってんだろうなあ」

永山は自分がバカになったような感覚に陥った。この男はユウコのことを知っているわけではない。が、手を止めたのは明らかに彼女のことを考えたからだった。永山には全くわからなかった。どうしてこいつは、見も知らぬ女のために自分を殺すことを戸惑っているのだろう?

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