表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/88

泣いた悪猿①

夜の街

無音のくせにけたたましい


ショッキングピンクと茜色

乳白色と青緑


ネオンの光る夜の街で

永山藤次郎(ながやまとうじろう)は逃れていた



恐ろしい男から

怪物も怖れる怪物から

人混みの波をかきわけて


訝しがる人目もはばからず

永山は逃げていた






眠太郎懺悔録 外伝

泣いた悪猿






永山には秘密があった。

永山は見た目二十歳過ぎの、短い染められた茶髪を立てた目つきの悪い若者の姿をしている。が、この青年の格好は借り物だ。

永山は人間ではなかった。

マシラと呼ばれる猿の怪物が、人の姿に変じて人間社会に紛れて暮らしているのだ。

人間になりすますのは、さほど困難なことはなかった。姿形を変える術さえあれば、ほぼ視覚のみで物事を認識する人間で疑う者はまずいない。嗅覚に依存している犬のほうが違和感に気付くらしく、無闇に吠えるのが厄介なくらいだ。

更に人間の中に裏切り者がいるのだから有り難い。とある新興宗教が荒事に手を出すための人材を探していて、永山ら人外のものに戸籍を用意してくれるのだ。表向きは善良な市民団体を装っているため、教団に都合の悪い真実を知る邪魔者に制裁を加えたりするなど汚れ役を(にな)ってくれるものを探すのもひと苦労らしい。そんな役をこなすのに、永山たちは重宝されていた。マシラたちからしても、ときおり人間を食い殺したりするだけで七面倒臭い法律だの住民登録だのの世話をしてもらえるのだから有り難いことこの上ない。蜜月関係というのはまさにこの両者のようなことを言うのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ