音楽集会
祈りが通じたのかどうだか分かんないけど、次の週の音楽集会に拓也君は参加した。
音楽集会というのは、とにかく歌、歌、歌。先生のメッセージは終盤にちょこっとだけ。それからティータイムという、参加型サロンコンサートみたいな形式だ。
で、音楽集会で歌われるのはワーシップソング。
ワーシップソングというのは、70年代以降に作られた讃美歌・聖歌のことだ。アメリカのゴスペルから派生されたものやそれに感化された若い人たちがギターを手に歌い始めたもので、昔はゴスペルフォークと呼ばれていたらしい。おかあさんなんかは未だにゴスペルって言う。
どっちかと言えば素人っぽかったその歌が変わってきたのが80年代。バリバリ世間に名を知られていたプロ歌手の人が入信して、ワーシップレーベルを立ち上げてどんどんと楽曲を発表したのだ。その頃から教会でもギター一本ではなく、キーボード・ベース・ドラムなどが用いられるようになった。
そして今、ワーシップは発端の英語の翻訳バージョンはもちろん、日本で作られたもの、韓国で作られたものまで加わって、毎回選曲でモメるほど。
また、その中には改訂された讃美歌や聖歌に載ったものまである。
それに、この間たまたま何気に検索したら、なんとあの機械少女が歌っている動画があってビックリ。無機質だけど透き通っている声が意外とそのバラードに合っていた。
ただ、世間的なヒットソングではないから、初めて来た人は確実に知らない曲なので、とっついてくれないとそれで終わりだ。
拓也君はノリノリで参加してくれて、ティータイムには早速門倉さんにベースの弾き方を教わっていた。
だけど、これなら来てくれるかもと思った拓也君は翌週から来なくなった。
「拓也も来たがってんだけど、日曜日には練習試合が多くて」
拓也君は学校でバスケ部に入っているらしい。ちょうど中間テストの勉強期間で、2週間練習も試合もなかっただけなのだ。
そんな拓也君が次に来たのは、期末テストの前。
あたしは、早速出来上がったばかりのジュニアキャンプのパンフレットを渡した。これもクラブでダメかもなぁと思ったけど、長い休みの中、旅行する人は他にもあるみたいで、2~3日の休みなら大丈夫だという。
「行こうぜ、他の教会からもいっぱい来るし、面白いからさ」
ならと、拓也君と同い年の御国君と一緒に誘った。それで拓也君が頷いたときには、思わずちっちゃくガッツポーズしちゃったよ。でもそれを見た御国君が後で、
「明日美ちゃん、コレ貸しね」
って、変な笑い顔で言われた。
バカ、そんなんじゃないから!
あたしは純粋に拓也君に教会に繋がってほしい、それだけなんだからね。
いろいろ言い訳してますが、明日美は拓也が気になって仕方がない様子。
※ボカロ賛美、ワーシップで検索をかけるとたくさん出てきます。
無機質な歌い方ではありますが、私はアリだと思います。