9.光
生徒会長につきまとわれるようになった俺。
最近は自分嫌いとか、そんなんどうでも良くなってきた。おそらくあの人はコレが目当てなのだろうケド。なんだかな……。
「俺をどうしたいんだ」
頭を抱える。
「あれ?病気?大丈夫?」
頭を痛めるもう一つの存在の幼馴染が俺の横に立って顔をのぞいてきた。
なんとなくムカついたのでその鼻を掴んで曲げた。
「いっつ!?なによぉ!心配してやったのに」
涙目になってぼかぼか人の肩を叩いてきた。
「似合ってるな」
「私の鼻が曲がって似合ってるわけないじゃない!」
「違ぇよ、そのヘアピン」
ヘアピンについたガキっぽいアニマルがますますお前らしくって。っていうまえに、嬉しそうに自分の世界に入っている顔をしていた。いつものことなので、もう何も言うまいと突っ込まない。
「へ、へぇー?悠馬が気がつくなんて珍しいじゃない。これレアものなんだから」
それで?
「ふーん、百円じゃないのか。うん、お前に似合ってるわ」
普通に百円で売ってそうなヘアピンを堂々と使いこなせるのはお前しか居ない。
皮肉で言ったのにも関わらず嬉しそうだ。……コイツ、ほんとわかんね。
「で?何を難しい顔してたの?あ」
緑は何かを思いついた顔をすると、深刻そうな顔をした。
「悠馬もしかして不治の病かなんか?」
「え?お前が?」
「違うわよ!」
失礼だと怒ってるお前のほうが失礼だと思わんのか。この馬鹿娘め
「で?」
「え?」
「俺はそんなに顔色悪いのか」
ソレはいいことじゃないか。だってそうだろ?俺は苦しくないのに外見が苦しそうだなんて最高だな。ふはは
「ううん、超健康的」
超がつくぐらい健康的なのか。
「ただ最強に不機嫌そうな顔で」
今最強に不機嫌なのはお前のせいだよ。間違いない
「いっつも私の顔見ないのに、今日は私のこと褒めてくれた」
お前の顔なんか見てないって。今日ヘアピンのことに気がついたのは、光が反射して俺の目を攻撃してきてうっとおしかったからだよ。まぁ、斜め前に移動したら治ったからよしとしよう。
「さて、お前は俺に言うべき言葉あるんじゃないのか」
「え?な、ないわよそんなの!」
「嘘をつくな」
普通に考えて、謝罪すべきだろう。
ヘアピン攻撃と、俺侮辱罪で訴えるぞごるぁ
「うぅ、う、う」
成程。
「緑」
俺は威圧的に振り返り見下すように顎をあげた。
「分かった。素直になれないのなら仕方ない」
俺ももう次から謝らないから。そしてお前に対し嫌がらせを決行する。
「あ、待って私」
手で口を塞ぐ。
今更謝罪の言葉なんて聞きたくないんだぜ。だがしかし、そんな顔を真っ赤にして泣きそうな顔をするなら、猶予をやらなくもない
「次は覚悟しとけ」
そういって俺は歩き出した。
曲がり角を通ると、目の前に長い影が見えた。
顔を上げると、俺の悩ましい存在がニッコリと微笑んだ。ゆっくりと口が開く
「この、女誑し」
そういって去っていった会長の顔は恐ろしく、いや、清々しく爽やかな笑顔だった。
だから、俺が何をした。