7.幼馴染side
「え……?」
見慣れた携帯片手に、私の幼馴染は珍しく私の部屋に来ていた。しかもその理由のほうが私には驚きの内容だったわ
「女の子にどんなメールおくったらいいか?って、そういった?」
「あぁ」
そういって彼は頭をかいた。ねぇ目を逸らさないでよ。
「ふぅん、とうとう女の子に興味持ったんだ?」
「もともと持ってるよ」
じゃあ私はどうなの?……なんていえるわけもなく、口を噤む。
そうよね、彼にとって私はいつまでたってもおせっかいな隣人なんだよね。分かっちゃいるけど辛い。どうして?私はずっとアナタしか見ていないのに
「おい」
「あ」
ぼーっとしていたらしく、人の顔を覗き込んでいた。
「で?何て送るの?」
「お前人の話聞いていたか?」
あ。どう送ればいいのか。だっけ?
「私に送るように送ればいいじゃない」
「出来るわけないだろ」
即答で返された。
何よ、私とその女とじゃ違うっての?むっとなる。
(鈍感鈍感鈍感!あたしがどれだけあんたのこと好きか知ってるの!?何よもう馬鹿!)
無自覚鈍感な悠馬はポケットからなにかのチケットを取り出した。
「映画一回視聴無料券やるから」
「!!」
恋愛モノじゃん!
これってさ、これってさ、もしかしなくとも遠まわしなデートのお誘い!?
「うわぁ、これ今はやってるヤツじゃん!」
「姉貴がデートに行くはずだったのにドタキャンされたらしくてな、俺に回ってきた。……それで」
それで俺と行かないか?……勿論行くよ!
妄想と期待を胸にワクワクと続きの言葉を待っていると……。
「話し戻すけど、なんて送ればいい?」
脱力。
そうよね、そんな考え思いつくわけ無いわよね。だって悠馬だもんね。そうだよ、じゃなきゃ私小学から片思いしてないわよね……はぁ
「普通に『はじめまして、これからよろしく。』でいいんじゃないの?」
恋人同士ならもっと書かなきゃ駄目なんだろうけど、彼女との関係性知らないしね!
「それだけか?」
「なによ、文句あるわけ?私ときなんか『ん』ってしか返事しなかったじゃない」
「自分から送るんだぞ?」
「じゃあ私が送ったようにしたら?」
「え……」
嫌そうな顔をした。なによ、渾身の力を注いで可愛くデこったのに。
「やっぱ、自分で考える」
「ちょっとまって」
服を掴む。
「あ?」
「チケットは?」
そのポケットの中のモノ。
「あぁ、ほい」
俺と行こうなんて、甘い言葉は出てこない。ぽんっと軽い調子で渡された。
……っ鈍感!
「ねぇ、これカップルのみって書いてるよ」
「あぁ?じゃ男誘えば?」
あのね
「私はそんな男友達居ません!」
「じゃあ親父と行けば?」
「何処の世の中にあっまーい恋愛映画を父親と見に行く乙女がいるのよ!鈍感!」
「なんだ、お前」
どきっとなる。
はは……俺と行きたいなら最初ッから言えよ、いいぜ!行こう。
なんて空想が聞こえる。
が
「友達も居ない、親も駄目って、じゃあそのチケット無駄だな。寄越せ」
奪われる。
「え?」
「お前にはまだ早いものだったな。ほら代わりの俺が一番好きな飴」
手の中にレモン味のデカ飴一個落とされ、彼はチケット片手に去っていった。
「~~~~~~っっ!!」
このっ……ばかぁ!!