3.嘘
今日は朝の挨拶の日だ。
「おはようございます」
会長がにこやかに挨拶をしている。
俺は会長の目の前に立った。
「……」
「おはようございます」
90度の角度を守って頭を下げて挨拶をする。
「おはよう」
にこっと会長は笑う。
よし、俺はコレで命の危機から回避したぞ。
別に自分のためじゃない。
俺のためだ。
「よう、悠馬」
他の男子に首をつかまれ運ばれていく。おい、挨拶しないと、殺されるぞ。そういった俺の言葉は冗談に受け取られ、だれも構っちゃくれなかった
そりゃそうだ、相手は誰もが慕う生徒会長だもんな。
時間も流れ退屈な授業も淡々と進んだ。
対して仲良くない友達と昼飯を食し、軽い雑談で時間を潰す。
「なぁ、悠馬」
「ん?」
「おまえさ、生徒会長好きなんか?」
「いや、むしろマイナス」
あれで好意持つやつはマゾだけだろう。俺はマゾっぽいけど違うぞ。
「そうか、なんだよつまんねぇな」
なんだよ安心しました顔してつまんねぇって。分かりやすい男だな。
「はは、何馬鹿言ってんだよ葉木ちゃん、こいつには幼馴染いるじゃん」
「あぁ、そうだったな、若奥様」
アイツは隣のクラスだから、この教室には居ない。
ちゃんと前もって学校では近寄るなといったのにあの似非ツンデレときたら、お弁当わすれたでしょ?なんっつって弁当持ってきやがった。それから俺はカラカイの対象だ。
「ウザイな」
正直どうでもいい、軽く悪いと思ってない調子で笑うこいつらも、うっとおしく構ってくる幼馴染も、クラスの女子も、教師も、自分も
「……ねぇ」
さらっと、絹のような髪の毛が俺の顔にかかった。
ごっとん!!
椅子を斜めにして座るという態度の悪い座り方をしていた罰か、会長出現に驚いて俺は倒れた。皆が俺を見て笑う。もちろん会長以外。
「大丈夫?ゴメンね。私が急に話しかけちゃったから」
屋上で会ったときとは違い、淑としている。
え?人違い?もしくはドッキリ?
「えーっと、俺……自分になんかようっすか?」
「うん、ちょっとお願いあるんだ?君家の近く小学校だよね?こんど高校と小学校で交流会するんだけど……詳しい話は、ここではちょっと」
なんだ、この有無を言わせぬオーラーは。
「どうぞどうぞ、つれてっちゃってください」
そういって俺を売る友達。
覚えてろよ
俺は会長の背中を追って歩いていくと、何人かが会長に挨拶する。彼女もまたにこやかに挨拶をして、歩いていく。
ついた先は生徒会室。……初めて入ったが思ったよりシンプルだな。
「で?小学生がどうしたんです、ぅがっ?!」
最後まで言う前に顔面をグーで殴られた。
ふらついて机に倒れる俺を無視して、会長はさっさと扉に鍵をかけた。
え?いじめ?
「え……ちょっ」
「そんな企画嘘に決まってるじゃない。本当だとしても君に頼むことなんてないよ」
「なんすか、マジで」
俺、どんだけアンタに嫌われてんの?