28.終
目覚めたらそこは病院で、俺はベットの上にいた。不思議なことに俺たちは軽傷で済んでいた。
怒られるかと思ったが、学校側は俺たちが軽傷なのと下校時間ゆえに目撃生徒が少なかったということで、今回の問題はなかったことにするとしたらしい。
それでいいのかとも思うが、テレビ沙汰なんて御免だから、俺はただ「はい」とだけ言った。
「緑は?」
先生は俺の顔を見て、どう言おうか悩んだそぶりを見せた後、組んでいた腕を緩め、こういった。
「会うかい?」
記憶の最後に見た緑はうつろな瞳で壊れた人形の目をしていた。
でも、今は
「緑」
名前を呼べば、悲しそうな瞳で俺を見た。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
涙を流しながらしきりに俺に謝る。
「ごめんなさい」
「緑」
俺は彼女に手を伸ばす。しかしびくりと揺れる彼女の肩を見て手を引っ込める。
「ごめんなさい、嫌いにならないで、嫌いにならないで」
泣きながら謝罪する。
「彼女の精神はかなり乱れているんだ、少し鬱の気もある」
先生は苦い顔をしながら俺に言った。
俺は何も言わず、ただ何も言わなかった。言えなかったんだ。こうなったのは俺のせいでもあるんだ。謝り続ける彼女を引き寄せ、抱きしめる。
彼女は涙ながしながら激しく暴れ俺を拒絶した。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
謝りながら俺を殴る。
傍観していた人たちも俺が口から血を流すとはがそうとした、けど俺はそれを断った。
「緑ごめんな」
「ごめんなさい」
「俺のせいだな」
「ごめんなさい」
俺は目を閉じた。
「俺は俺が嫌いだけど、お前に殺されるわけにはいかないんだ」
「ごめんなさい」
「けど、俺はお前のそばにいる」
「ごめんなさい」
震える彼女に、熱意をもって示す。俺はこれから彼女と一緒にいよう。
「また前みたいに笑ってくれ」
恋愛感情じゃないけれど、俺はだいぶお前の笑顔に救われていた。
会長も、エリスも、俺も、お前も一人では生きられないから、何かに依存して何かに気がついては知らないふりをして、見ないようにしてごまかしていた。
けど一人で生きられる奴なんていないんだ。
どう強がっても、どう言い訳したって
「俺達って弱いよな」
それでもいいじゃないか
「生きようぜ、一緒に」
俺たちがいなくても変わらない世の中なら、いてもいなくても同じ世界なら
「ここにいてもいいんだ。そばにいてもいい。その間、俺はお前のものだ」
生きてもいいんだ。
嫌われても、好かれても、なぁ、そういうものだろう
空が青くて綺麗なのも、悪くない。
「なぁ」
また、あほみたいなあのセリフ言ってくれよ。お前の口から、あの言葉を聞きたいんだ。
緑……ごめんな