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2.女

 自分が嫌いなヤツなんて、けっこう珍しいのかもしれない。

 なんて思っているとあいつが良くやって来る。

 「悠馬!」

 家が隣同士でおれと部屋が近い。だからって、漫画でありそうな移動方法で男の部屋に来なくともいいと思う。

 イライラして物に当たったときの残留物が部屋にあっても、こいつは気にしない。

 俺のこの癖の理解者というよりは、多分勘違いしているんだろうと思う。『男の子の部屋はきっとこんなふうに散らかっているもの』とでも思っているに違いない。賭けてもいいね。

 「うわー相変わらずちらかってるねー」

 そういって勝手に入ってきたのは幼馴染の木村緑きむらミドリ。どっかの委員長とは対照的なショートヘアに太陽にやけた肌が特徴的。

 「よう、陸上馬鹿。今日も勝手に入ってくるな」

 自分が嫌いだから、俺は自分を殺したい。でも家で自分を傷つけることができないのはひとえにこいつのせいだ。

 毎日きやがって。

 「何その言い方」

 足の裏の靴下についた埃をはらいながらにらんできた。

 「アンタの部屋、ほっといたらゴミ屋敷なるじゃない?私が掃除してあげなきゃアンタしないでしょ?べ、別にあんたのためじゃないから、私が遊びに来れなくなるからなんだから!」

 「黙れ似非ツンデレ。お前は体育系らしく外で若い奴らと砂浜走って来い」

 「ヒド!何ソレー!!」

 勝手に持ってきた箒で俺の頭を殴ってきた。

 (うぜぇ)

 「ほら、のいて!わぁ!?もう、なんでガラス割って放置してんのよ!危ないでしょ」

 ガラス殴ったのに、俺の手は怪我一つしなかったな。

 「きゃ、煙草で布団穴あいてるじゃない」

 火事になるかなって思ってくわえ煙草をして寝て起きたら布団で自分で鎮火してたな。

 今思えば口が火傷しなくてよかった。

 「てか、煙草すってるの?」

 「やんちゃ時代の忘れ物さ」

 「何カッコよく言ってんの?馬鹿みたい」

 馬鹿だと?

 あーもうとかいいながら掃除する幼馴染の後姿を見ながら、ポツリ呟いた。

 「お前、尻小さいな」

 ガッツン!!!

 なにも箒の柄のほうで殴らなくても。目に入ったら盲目になるじゃないか。

 「セクハラだよ!!」

 「毎日俺の部屋に来るのはプライパシーの侵害じゃないのか」

 「掃除してあげてるんだよ!当たり前じゃない」

 「押しかけてきてよく言うよな」

 「え?」

 箒を突きつけられて目を逸らす。

 「あ」

 「何?」

 箒を下ろしたのを確認して声をかける。

 「生徒会長いるじゃん」

 「うん、我高校最初で最後の天才って言われてる人」

 「そうだったのか、どんな人か知ってるか?」

 「知らないほうがモグリだよ」

 なるほど俺はもぐりか。良いから言えと言えば口を尖らせながら説明を始めた。

 「星川麗華ほしかわレイカ二年から生徒会長に選ばれるぐらい人望があり、成績優秀、運動神経ばっつぐん!んで顔がいい」

 「最後のは誰の意見だ?」

 俺には凶悪な顔のイメージしか見えなかったな。

 「酷い男」

 とかいいつつ嬉しそうなお前も随分だよ。

 「すっごくいい人で困ってる人居たらすぐ助けてくれるし、運営とか率先してやってくれるからいつも問題がないんだって。先生の手伝いもしてるし、非の打ち所がないね、友達も多いし。先輩後輩の隔たりもないらしいよ」

 なんだ、できる女ってことか。

 で、なんで俺は挨拶返さなかった程度で殺されそうになるんだ?

 「高校卒業したらアメリカいくんだって」

 「どうでもいいよ、そんなん。お前どうでもいいことばっか知ってるな。ミーハーめ」

 俺が知りたいのは、なんで俺が殺意をもたれているかってことだ。……ん?

 背後を見る。

 現在進行形で俺の命が危ないらしい

 俺は逃げるを使った。   

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