16.笑
俺はなんとなくほかとは馴染めなかった。例えるなら俺は小説の主人公ではなく、モブで終わるようなキャラクター。
賢いわけでも、かっこいいわけでも、運動できるわけでもなかった。どちらかといえばただの傍観者だった……だからだ
傍観者である俺は、おれ自身の人生すら傍観してしまった。そしてソレを意識したとたん、この世界と俺とは分かれた。区切られた。そう感じた。世界がこんな俺を拒絶したんだよ
「俺は俺が嫌いだ」
そんなはず、おこりうるはずがないんだ。
世界はいつだって一つしかない。分かっているのに。世界から孤立したように感じる俺が、堪らなくイヤで、悲しくて、苦しくて嫌い。嫌いなんだ!
「死んでしまえ」
生きる必要すらないように感じる。……俺は死んでもいい、でも俺は死にたくない。
「俺は」
俺は
「きゃあああああああああ」
緑の悲鳴で我に返った。空中に身体を投げ出した彼女と眼が合う。
死にたくない、でも死にたい俺。……俺は
……俺は臆病だっ!!
「あぶねぇ!!!!」
叫んで走り出す
「あ、大丈夫大丈夫」
俺の顔を見て彼女は微笑んで素早くその小柄で華奢な身体をひねり、まるで猫のように屋上へと着地した。
あまりの急のことで俺は走っていたことを忘れ、その場で派手に転んだ。
「ぷ、あははは!ごめんね?びっくりしたかな?」
少女はマイペースに俺達の顔を見た。
「あなた、誰なの」
会長が眉を顰めながら少女を睨んだ。
「私??気にしなくていいよ。どうせ消えるし」
「……」
「睨まないでよ~分かった言うよ。うちは二年の小松エリスっていうの」
エリス?
しっかり目を閉じていた緑はそっと指を広げてのぞき見、再び小さく悲鳴をあげた。
まだ閉じていたのか。
「移動サーカス団でね、あっちこっちいってるってわけ。このぐらいの高さなら平気。ちょっと足ぱきっていったけど平気」
それは本当に平気なのか?彼女は笑うと首をかしげた。
「で?君達はなんなの?」
「え?」
「いやに話の内容が暗かったから、自殺願望者の集まりかなって?」
「違うわ、ソレはコイツだけよ」
そういって会長は俺を見た。
「へぇ?嘘でしょ?」
「嘘ついてどうするんだよ」
まぁ、自殺志願者になった覚えはこれっぽっちもないが。
「え?だって」
彼女を俺を見て目を細めた。
「彼は私を助けようとしたよ?」
「それは、人間として当たり前な……」
ぐぐいっと彼女は俺の目の前まで迫ってきた。吃驚した早いな。
「アナタの瞳はまだ死んでないわ」
「?」
彼女は俺の困惑を感じ取ったのか微笑んだ。緑の微笑が晴れた天気のようなら、会長の微笑みは雪空。そして彼女の……エリスの微笑みはまるで雨上がりの清々しさのある笑みだった。
「え?嘘、さっき飛び降り……え?」
緑の遅れた理解力がまだ追いついていないらしい、緑をみてエリスは微笑んだ。
「あんたは自殺志願者なのか?」
「私も死にたいって思うときはあるよ」
「死にたいなら死ねばいい」
会長は間一髪いれずに言い切った。
「殺してあげるわよ?私が、この手で」
「ふふ」
エリスは会長を見て笑った。
「なにがおかしいの?」
不愉快そうに会長は睨んだ。
「アナタも同じなのね」
空気が固まった。俺は回避……つまり逃亡を選んだ