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15.跳

 「嘘……っこんなところで」

 幼馴染が何か誤解しているようだが、どう考えて俺が今このタイミングで緑を襲う必要があると思っているんだこのアホ似非ツンデレめ。

 普通に考えてダンボールに隠れるには小さくなるしかないだろう。先生に見つからないようにただでさえ狭い段ボールという隠れ家に入れてやった慈悲深い俺の配慮を察しろこのバカ

 てか動くな。

 「おい、緑」

 「だっ」

 「?」

 だ?

 「まだだめぇー!!!」

 すっぱーぁん!俺の頬に大ダメージが

 「いってぇ!?」

 ダンボールから転がるように出て行った俺の目の前に、色白な生足が見えた。

 「え?」

 顔を上げると、冷めた顔をした会長がいた。

 「あ」

 「悠馬君」

 「はい?」

 俺は頬を押さえながら返事をした。会長は2、3歩離れてスカートを押さえた。

 「パンツ、見ないでくれる?」

 「ぶ!?」

 「悠馬ぁ!!!」

 緑が俺の背中に飛び乗ってきた。

 名前は分からないがプロレス的な技をかけられ、ぎりぎりと俺の背中が悲鳴をあげる。

 「ご、ごかいっすよ!?会長のパンツなんて見てません!」

 「今日の気分にあわせてみたの」

 「すっごい色の濃い紫色でしたけど!?」

 「見たのね」

 「はっ!」

 しまった、罠か! 


 数分後。


 自分で死ぬ前に殺されるかと思った。

 「二人とも、本当仲良しね」

 会長は屋上の扉を開けながら言った。

 「あ、鍵」

 「生徒会の極秘キーよ。これさえあればいつでも学校に忍び込めるわ。代々伝わる鍵だから内緒ね」

 「はぁ、なるほど」

 「じゃあ私会長の後から入ったんだ」

 今ソレはどうでもいい。

 「お前邪魔だから散れ」

 「いいじゃない聞かれて困るようなことなの?」

 俺は会長のほうを見た。

 「……仕方ないわね。教えてあげる。私が好きでもないのに悠馬君に付きまとう理由」

 「え」

 緑はその言葉を聞いて初めて自分が今場違いと気がついたらしい。

 本当今更だけどな。

 「簡単な話よ、自己満足のためよ」

 「は?」

 「私には幼馴染が居たの、飛鳥っていうんだけど……彼女もいわゆるアナタと似たような思考の持ち主でね」

 生きることの意義を考え、死ぬことの意味を考え、自分の先を見ていた。

 「面白いと感じない、他人に合わせて何故笑わなければならないのか、他者と私は違う、個性というものが存在する。なのに何故あわせる必要があるのか。だけど他者は己と価値の合わぬものを排除する。嫌でも合わせないといけないの。そんな自分に嫌気がさしていたの」

 「……ソレを言ったらどうしようもないような」

 「ふふ、そうでしょう?だからあの子は……飛鳥は」

 否定だらけの人生を見続け、最後には自分の価値さえも存在否定しはじめた。

 私は彼女をどうすることもできず、みすみす死なせた。

 「あんな想いはもうしたくないの。アナタと彼女は似ているわ、あなたのその根本的な考えが改まるまで、私はアナタの傍に付きまとうわ」

 「うわ、めーわく」

 「自己満足だっていったでしょ、トラウマなのよ、アナタみたいな自分を見下した目をした人を見たら、嫌でもあのときのことを思い出すの」

 そうだったのか、俺でトラウマを治療しよって腹か……なんて迷惑な。

 「ねぇ、でも彼とその飛鳥って人は違う類の人じゃないかな」

 「え?」

 俺達は同時に見上げた。この場にいる、誰の声にも当てはまらない声……。屋上の旗を本来吊るすものの上に器用に立っている少女が一人。

 「お前、何してんの……?」

 「うち?うちはね~自殺願望者」

 にこやかにそういった彼女はそこから跳んだ。


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