13.話
『 緑なかせたの。あんただろ 』
へぇ……まるでナイトのようね?というつぶやきが聞こえた。
『そうよ』
悪びれもなく彼女は俺に言ってのけた。やはりか、しかし何故だ?
「あんたは緑みたいなタイプは無視するとおもってた」
『……そうね』
しかし、相手にした。ということは事実
「緑は顔に出るタイプだ」
『……』
「アイツは最後に俺の顔を見た。つまり俺に関わりのあることだろうと思う」
『否定はしないわ』
「だとしたら聞く権利はあると思うが?」
『黙秘権があるわ』
言う気はないと、そういうつもりなのだろうか。
「何か都合の悪いことでもあるのか」
『私はないけど、彼女はあるんじゃないかしら』
「どういうことだ」
俺のことで聞かれては困る会話ってなんなんだ。と思案していると電話の向こうで、彼女の溜息が聞こえた。
呆れたいのはコッチだというのに。
『アナタが気がつかなきゃだめなことよ』
「……じゃあ話を変えるが」
『何?』
俺は暗くなってきた部屋に灯りを求め、電気をつけた。自分の重たい体をベットに放り投げるように座り、壁にもたれる。
「会長は何で俺に付きまとうんだ?本当の意味を教えてくれ」
『本当の意味?』
「惚けるな。いい加減にしてくれ。うっとおしんだ正直。俺は俺だ。あんたはあんた。自由にさせてもらおうか」
『断るといったら?』
「訴える」
『勝てるとでも?』
「訴えが通らないのなら一つだろう」
俺はカーテンを少し開けて空を見た。もう夕刻も終わり太陽が沈むだろう……茜色の光が濃く、赤っぽい。
「身体の開放でも求めるさ」
『…………やめて』
「会長が俺を縛り、緑を泣かすなら、そういうこともやらざる得ないかもしれない」
『止めて聞きたくないわ』
「明日、学校の屋上に来てくれ」
『いやよ』
「話し合おうじゃないか」
『断るわ』
突如駄々っ子のようになってしまった会長に俺は溜息をついた。いつもの冷静で頼れる会長は今この電話の向こうには居ないようだった。
そこまで彼女をさせる、何があるんだ
「HRがはじまるまでには来てくれ、先生が来ても、アンタ以外の誰が来ても俺は飛び降りるからな」
『……本気なの?』
「本気だ。事の真相をお聞かせ願うまではな」
『たいしたこと無いわよ』
「それでも、だ」
会長は黙った。どうやら後一押しのようだ。
「……俺は、俺が嫌いだ」
『……っ』
「でも、俺は、死ぬのはイヤだ」
『……』
「だから頼む会長」
俺はカーテンから手を離した。
「俺を生かしてくれ」
会長の返事も待たず、俺は電話の電源を切った。
「ふぅ」
携帯のアラームを四時にセッティングする。
明日は早起きだな。あんだけ啖呵きっといてなんだけど。自分で起きれるだろうか俺……それだけが心配だな。