11.夢
麗華……ごめん、ほんと、ごめん。だけど、やっぱり自分の存在を認めれないんだ。自分の価値を見出せない。麗華だけが私の希望だったよ、こんな私を好きだと、大事だと……大切だっていってくれて、自分よりも好きだって、私の価値を守ってくれて……嬉しかったよ。
でも、駄目だ。
バイバイ。麗華……愛してた。ごめんね。
「飛鳥!!」
伸ばした手は空気しかつかめない。汗を流しながら血の冷めた手のひらで布団をつかむ。こうしてもう居ない君を夢に見るのは何度目だろう。
「飛鳥……」
ベットから起き上がり、窓際においてある彼女と撮った写真を見る。
彼女と撮った唯一の写真。皮肉なことにこの日が、生きた彼女と話した最後だった。
「馬鹿。許さない……許さないんだから」
起き上がり、カーテンを思いっきり開ける。まぶしい朝日に背を向け、机の上に置いてあったちかちか光る携帯を手に取り、メール着信を見て、驚いた。
差出人の名前は
「木村……緑?」
確か、悠馬の幼馴染、だったかしら?
呼び出された場所は学校の屋上だった。……部活でもないのに、休日に学校にくるなんてね。
「あの、生徒会長すみません、呼び出して」
「……私のメールアドレス、彼から聞いたの?」
「いえ、前回悠馬がメール送るのに困ってたときに見て……あ、イヤだったらゴメンナサイ」
「別にいいわよ?知られても困らないわ……悪戯メールがこなければね」
会長のお面で微笑むと、彼女は安心したように微笑んだ。変な子ね、不安ならやらなければいいのに
「で?何かようかしら」
木村緑は忘れていたらしく、ハッとしたように、顔を上げた。
「悠馬のこと好きなんですか!」
「……」
なんって直球な……。
「どうして?」
「会長みたいな素敵な人が、悠馬みたいな地味な男に近寄るなんておかしいですもん!」
「あら、私だって知り合い幅は広くもっておきたいの、悠馬くんはなんだかんだいって、協調性があると思わない?冷静で周りを見ているし、彼からこっそり聞きたいこととかもあるのよ」
「こっそり聞きたいことって何ですか」
「学級の様子や、みんなの不満とか」
微笑んでそういいきると緑は不満げに頬を膨らませた。
「会長は学校の生徒のことも把握していなきゃいけないなんて、大変ですね!」
あぁ、そういう皮肉言うのね?醜い女。
「そうね、私はこの学校初の女会長だから、尽力を尽くしたいのよ……うざいかしら?」
なんて、言ってうざいって言う人は居ないわよね。
「……そうだったんですか。すみません私ってば」
思った以上に純粋な子ね。
「悠馬君のこと、好きなのね」
分かりやすいわ。
顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせていたが、最後には小さくコックンと頷き、最後には大きくうなづいた。ハッキリさせるつもりなのだろう。
「私は悠馬が好きなんです」
「そう」
「だから」
彼女はジャージの袖を握り締め叫んだ。
「だからもう、悠馬に近寄らないで下さい!!!」
好きだから、もう、嫉妬したくないか、胸を苦しくさせたくないから。……何より怖いから
そう、いいたそうね。
「分かるわアナタの気持、傍にいてほしい。報われなくてもいいから、傍にいて私を見てほしいのよね」
叶わない恋ほど辛いものは無いわね
だからこそ
「断るわ」
緑は目を大きく見開いた。
「私は彼に絡むわ、好きだからじゃない。私の自己満足。気持の代理のために私は彼に付きまとうわ」
木村緑は泣きそうな顔をして、私の目の前まで行き、頬を強く叩いた。
音が響く。
「意味わからない!!私に対するいじめですか!会長なんて……っ大嫌い!!」
涙を流し走っていく彼女の背中を見ながら、私は頬に触れた。
「……っ」
だって、……だって仕方ないじゃない。
もう、こんな想いしたくないのもう、こんな想いから卒業したいのよ
だってこんなにも……苦しいから
「こんなチャンス、もうないんだわ……だから、私はやめないわ」
なんとでも罵倒すればいい。解放されたいの。