10.幼馴染side
私はずっと君だけ見てるのに、君は私を見ない。
どうして?こんなにも君が好きで、好きで、息ができないぐらい好きなのに。私のことみてくれないの?ううん、見てくれなくてもいい。ずっとこうやって傍にいられれば
でも、できれば……気がついてよ
「?」
斜め前で頭を抱える幼馴染に不安を抱く。
え?もしかして風邪?
「あれ?病気?大丈夫?」
風邪だったら大変!ナース服で看病してあげようっと思っていたら急に私の鼻を掴んで曲げた。
「いっつ!?なによぉ!心配してやったのに」
涙目になってぼかぼか悠馬の肩を叩く。怒りながら安心する。
(……でも、元気そうで良かった)
「似合ってるな」
「私の鼻が曲がって似合ってるわけないじゃない!」
「違ぇよ、そのヘアピン」
え?これに気がついてくれた?アニマル君シリーズレアのヘアピン!一個999円高かったんだから。でも、あの鈍感な悠馬が気がついてくれた、嬉しい!
「へ、へぇー?悠馬が気がつくなんて珍しいじゃない。これレアものなんだから」
あーもう、なんで素直に喜べないの!?私!
「ふーん、百円じゃないのか。うん、お前に似合ってるわ」
照れるからって、誤魔化さなくてもいいのに。あぁ、眩しそうに私を見つめてる……悠馬は私のこと、どう思ってる?
って、聞こうとして恥かしくなって話題を変えた。
「で?何を難しい顔してたの?あ」
あの鈍感な悠馬が具合わるいだなんて……まさかっ
「悠馬もしかして不治の病かなんか?」
「え?お前が?」
「違うわよ!」
不治は不治でも、私のは恋の病よ!!
「で?」
「え?」
「俺はそんなに顔色悪いのか」
なんで、嬉しそうなんだろう。悠馬って時々本当に分からないときがある。今もだけど。顔色的には最高だよ?
「ううん、超健康的」
あ、不機嫌そうになった。
「ただ最強に不機嫌そうな顔で」
変顔好きだね、悠馬。そんな悠馬も可愛いと思う私って重症かな?
「いっつも私の顔見ないのに、今日は私のこと褒めてくれた」
照れて頭を下げると、悠馬は斜め前を歩いた。
さりげない動作がカッコイイ。見惚れる
「さて、お前は俺に言うべき言葉あるんじゃないのか」
「え?な、ないわよそんなの!」
動揺してしまう。え?嘘……わ、分かったの?
「嘘をつくな」
え?こ、告白タイム?!
そんな、まだ心の準備できてないのに
「うぅ、う、う」
声が、出ないよ。どうして!?チャンスなのに!
「緑」
悠馬は威圧的に振り返り見下すように顎をあげた。
やだっ!か、かっこいい
「分かった。素直になれないのなら仕方ない」
え?ま、まってそんな……私っ
「あ、待って私」
手で口を塞がれる。
胸が高鳴る。
うそ、悠馬って……こんな大胆だった?!
「次は覚悟しとけ」
そういって悠馬は歩き出した。
か、かっこいいぃ!!!
どうしよう、駄目!今言わなきゃ「好き」って!
曲がり角を通る悠馬の背中を追う、悠馬の影が見えた。勇気を振り絞って声をかける。
「ゆう……っ」
え?何を見てるの?
同じように後ろからこっそりと見上げると、そこには私の悩ましい存在がニッコリと微笑んでいた。
彼女はゆっくりと口を開く
「この、女誑し」
そういって去っていった会長の顔は恐ろしく、いや、清々しく爽やかな笑顔だった。
「は、まさか」
会長も……なの?