1.初
綺麗な青空が、憎らしい。
学校の屋上はいつもは誰も入ることを許されない。自分はそんな規則をしっているのに、なんとなく一人になりたくて屋上の扉の前まで来た、そしたら開いていた。
自分は自分が嫌いだった。
「はぁ」
真面目に優等生をやったこともある。
反抗期をして、不良になってみたこともある。
誰にでも頼られるリーダーやちょっとふざけたお茶らけたやつをやってみたこともある。
「はぁ」
なんにもでなれるし、なんにも慣れなかった自分が、嫌いだった。
自分が嫌い。
大嫌い。
だから、死ねばいい。
屋上のフェンスに手をかける。
「……」
丁寧に靴を脱いで並べてそろえる。……おぉ、まさしく自殺しますって感じだな。自分でやっといてなんだか笑えるな。
フェンスを越えて、外側にでる。
今は下校の時間。
人は帰ることに夢中で誰もこちらに気がつかない。
(落ちたら驚くだろうか、おどろくよな)
あぁ、なんか風が寒いな
死ぬ気はあるけど、なんとなく後一歩を踏む気になれない。
「……」
ふと空を見る、スゴイ綺麗な空だった。
ホントムカつく。
綺麗な青空を見るだけで幸せだわ。―――なんて言ってた幼馴染の顔を思い出して殴りたくなった。
「あー……死にテェ」
「殺してあげる」
「え?」
とんっ
視界がズレタ。
「うぉぉ?!」
身体を何とか持ちこたえ、フェンスを掴んだ。バクバクいう心臓を押さえながら睨みつける勢いで声の主を見た。
「あ」
見たことがある。パッツンのストレートロンゲガール。名前は忘れたがこの学校で彼女のを知らない奴はいない。
現生徒会長だ。
「ち、なんだ、落ちなかったの?」
「人を殺す気か!」
そう叫ぶと変なものを見るような目をされた。
「何言ってるの?自殺しようとしてたくせに」
大威張りで正論言われたら辛いな。
「あのですね、自分でやるのと他人にやられるんじゃ違うんすよ」
萎えたのでフェンスを越えて安全域に入る。舌打ちが聞こえた気がしたがこの際無視だ。
靴を履いていると生徒会長がフェンスの向こう側に立っていた。
「……」
「……」
なんとなく見つめ合うと、彼女はニコっと笑うと戻ってきた。
あ、よかった。なんだ死ぬのかと思った。
「何その顔、飛び降りるとでも思った?」
「うん」
「そんなのは弱い人間がすることよ」
会長はそういって隣に座った。
「で?君はなんで死のうとしたの?」
「会長はなんで俺を殺そうとしたんですか?」
微笑む会長を真顔で見つめると会長は笑うのを止めて拳を作った。
「!?」
ごっっ!!
有無を言わさず拳で初対面の人間に顔面をなぐられた!?
「よく、私が生徒会長って覚えてたね。天野悠馬君」
「えっ俺の名前なんで」
「朝の挨拶のとき、君だけ返事を返さないからね、ムカつくから他の子に聞いて覚えたの」
「すみません」
鼻を押さえながら謝ると会長は立ち上がった。
「許さない」
笑顔でそういって去っていった。
―――これが、自分嫌いな俺と、俺嫌いな彼女との初めての出会いだった。