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むかし、太陽が強すぎた国がありました。
嘘も罪も、悲しみさえも、すべて照らし出され、
人々は影を持つことを許されませんでした。
その国の地下に、ひとりの魔法使いがいました。
彼は光を操れず、炎も呼べず、
ただ影だけを集め、縫い合わせる魔法を持っていました。
影は、捨てられた感情でした。
泣けなかった涙、言えなかった言葉、
見なかったふりをした後悔。
それらが、足元から静かに伸びてきます。
魔法使いは影を拾い、
破れたものを縫い、
欠けたものを包み、
あるべき形に戻しました。
夜ごと、地下は少しずつ広くなり、
やがて影は、住む場所を得ました。
ある日、地上からひとりの子が落ちてきました。
光に疲れ、何も感じられなくなった子でした。
魔法使いは子を抱き、影で包みました。
闇ではありません。
それは、休むための影。
しばらくして、子は泣きました。
泣けなかった涙が、影の中で溶けていったのです。
「怖くない……」
子がそう言ったとき、
地上の太陽が、少しだけ弱まりました。
それ以来、国には夜が生まれ、
人々は影を持つことを許されました。
泣くことも、迷うことも、隠れることも、
すべてが人の一部になったのです。
魔法使いは今も、どこかの影の奥で
静かに縫い物をしています。
もしあなたが、
理由もなく暗がりが落ち着く夜があったなら、
それは彼が、影を整えてくれた証。
影は、光に負けるものではありません。
光を休ませる場所なのです。




