自由を掴んで
オーレイアの聖女の能力。
それは、視線を合わせた相手の心の声を聴くことができること。
そして、これは教皇にさえ伝えていない、歴代でオーレイアだけが発現した聖女の能力。
いつでもオーレイアの望むタイミングで、神託を受けることができること。
だから、オーレイアは神から神託を受けて知っていた。
もはや、中央教会に神託を受けるに値する聖職者がいないと、神が笑っていることを。
教皇にさえ、神は神託を降ろしていないことを。
レーゲンは知っていたのだ、この宗教国で神託を受けることができる聖職者は、もはやレーゲンしかいないことを。
レーゲンは、隠していたけれど、歴史上初めての男性としての神の愛し子、聖者であったのだ。
神から聞いていたオーレイアは納得した。
「レーゲン様って、本気で本当に、奥方様以外はどうでもいいんだね。」
レーゲンは最早、この国にはいない。
オーレイアを迎えに来た使者達がヴィーゼを見かけてしまったのだ。
ヴィーゼの美しさに、醜悪な枢機卿達が目をつけた。
だから、レーゲンは、ヴィーゼを害する可能性のあるこの神の国を見限った。
そこが面白いと神は笑う。
神は人間とは違う。
神を愛すから神に愛される訳ではない。
見ていて面白いから、神は聖女や聖者を選び、神として愛すのだ。
他の国の守護神がどうだかは知らないが、少なくともこの国の神はそうだ。
そして、オーレイアが聖女に選ばれたのも、ヴィーゼに気に入られていたから。
オーレイアが、レーゲンとヴィーゼの娘になりたいと、そう願ったから。
ヴィーゼとの二人きりでの閉じた世界を望むレーゲンが、嫌がるであろう姿が面白いから。
神はこっそりと告げ口する。
レーゲン達の逃亡先を。
それは遠い遠い、東の島国。
ぱちぱちぱち。
火花が散る。
「……ん、オーレイア?誰かいるのか?」
「ううん、誰もいないよ。ただの独り言。まだ交代の時間じゃないわよ、ヒースクリフ。」
焚き火に照らされる、寝ぼけたヒースクリフの端正な横顔を、オーレイアはうっとりと見つめる。
休める時はしっかりと休むを体現するヒースクリフは、すっと再び眠りに落ちた。
眠りながらも、ヒースクリフはオーレイアをしっかりと包み込みように抱きしめていて、護ろうとしてくれている。
それが、オーレイアはたまらなく愛しかった。
「ヒースクリフが私を護ってくれるように、私もヒースクリフを護ってあげるからね。」
行き先は決めていない。
ヒースクリフと冒険者でもしながら自由な旅を満喫して、そして気が向いたらレーゲン達に会いに行こう。
これからは、のんびりと、二人で自由気ままに生きていくのだ。
傍で眠るヒースクリフの胸に頬を寄せて、オーレイアは幸せそうに微笑んだ。
聖女と聖者が見放し、神が見放した国は、敗戦した隣国から更に手を伸ばしてきた帝国に攻め込まれ、じりじりと国力を削られ、いつしか国の名前を変えながら、小国へと縮小化していった。
聖女はこの国に、二度と現れなかった。
初めての連載作品でしたが、もう少しヒースクリフの雄みを出したかった所です。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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本作は短編「視線の行方」「視線の絡み合う先」と登場人物が繋がっているので気が向いたらぜひご覧ください。




