九
長い間、私情で投稿しなくてすいません(^_^;)
これから復活する(と思う)のでよろしくお願いします
m(_ _)m
レイテ湾の中は地獄のような情景だった。打ち砕かれた輸送船や、艦の中央から二つに割れた駆逐艦、そして燃え盛る巡洋艦。湾に上陸していた部隊も砲撃の嵐にさらされたのだ。地面に開いた黒い穴が、延々と続いていた。
大和・武蔵以下連合艦隊主力艦の全力投射に、航空機の護衛を損失した米上陸部隊は為すすべもなかった。
「これを自分たちがされたらと思うと、ゾッとします・・・」
そこで言葉を切った前島は目の前の惨状に目を奪われていた。城崎は黙ったままの大村を見た。自分より二つ年が上の参謀長は何を考えているか分からない人物だったが、その頭の切れだけは確かだった。
「長官、主力の役目は終わりました。敵空母はこちらの空母部隊とやり合って疲弊しています。今こそ、水雷戦隊に突撃を命じましょう」
不意に大村が口を開いた。彼の具申を受けた小沢は目を伏せる。そこに参謀副長の高野が槍を入れた。
「ですが、敵空母部隊に少しでも艦爆や艦攻が残っていれば派遣した戦隊は、確実にやられてしまいます。ここは全隊が一体となって空母部隊を追撃すべきです」
こちらの意見にも一理があった。小沢は沈黙を守ったままだ。その後ろで、大村と高野の意見のどちらを取るかを他の参謀たちが議論を始めた。
「城崎作戦参謀、貴官はどう思う?」
場外を決めこむつもりだったが、案外早くに話が振られてきた。前島も自分と同じことを考えているらしかった。だが、彼は情報参謀だった。
こちらを向いた参謀連は自分の口元に視線を向けている。どちらの意見を言おうが、長官の気持ちは変わらないだろうが、城崎は攻撃を進言した。
「自分は水雷戦隊を早急に向かわせるべきだとおもいます。ただ、水雷戦隊を裸で進ませるわけにはいきませんので、空母部隊の残存戦闘機から、いくらか裂いて直掩させてはいかがでしょうか」
自分の言葉が終わると、小沢は小さく首を縦に振った。方針は決まった。
「湾外にいる第二水雷戦隊に打電。ただちに敵空母へ向かえ。加賀に打電、第二水雷戦隊を航空支援せよ」
大村の命令にはじかれたように、通信参謀が駆けだす。その靴の音が小さくなっていくにつれて、艦橋の中に漂う重油の匂いが強くなったような気がした。