六
お久しぶりです。遅くなって申し訳ないです
「長門より連絡。貴艦ノ好意ニ感謝ス。サレド、我ガ任務ノ放棄ハ不可。現在、米軍機ガ本海域ニ接近中。本艦ハコレヨリ対空戦闘ニ入ル。以上です」
索敵員が声を上げる。笹内がこちらを向いて、驚いた顔をした。まだ、爆音が聞こえないどころか、双眼鏡でも視認できない。
基本、対空戦を目視に頼っている駆逐艦は、空母や戦艦たちのように、航空機に対して機敏に対応することができなかった。
城島が頭を動かしながら空に目を凝らしていると、突然、長門の後部から火が噴き出した。その直後、六本の矢が空に吸い込まれるように駆けて行く。視力に関しては、索敵機の兵と同等の視力を持つ城島の目でも、追尾は不可能だった。
その時、息を切らしながら電信員が駆けこんできた。
「旗艦より入電。これよりレイテ湾に突入し、第一艦隊を援護する。信濃の護衛として、島風、雪風は本海域に残れ。その他の艦は我に続け、とのことです」
たしかに、信濃の護衛には艦が必要だろうが、ここで駆逐艦を裂くのは得策ではないはずだ。レイテ湾に存在する戦艦や巡洋艦、輸送船を沈める支援をするのは、疲弊した航空部隊よりも、戦いらしい戦いをしていない自分たち駆逐艦の方が有利だろう。
しかし、今ここで意見を言っても無駄だ。すでに艦隊司令が決定したことを覆すのは難しい。
城島は息を一つ吐き出したあと、笹内に命じた。
「ただちに信濃の横につけ。ぶつけるなよ」