ギャグマンガは世界を救う
ある日、とある学校の一クラスの生徒達が異世界へと転移させられた。
「初めまして、異世界の方々、私はあなた達をこの世界に呼び出した、賢者ユリシアと申します、早速ですがあなた達にはこの世界を救っていただきます」
ユリシアがそう話すが召喚された側は何が起きているのかわからずに混乱しているとユリシアが魔法を放って生徒達が一斉にユリシアを見る。
「呼び出されたあなた達には世界を救うと言う選択肢以外ありません、元の世界に戻りたければこちらの言う事に従ってもらいます」
「いきなり世界救えだなんてふざけんなよ!!」
「そうよ!! 私達を元の世界に帰してよ!!」
「うるさいですね」
ユリシアが手をかざすと反発した二人の生徒の身体が破裂して血が飛び散る。
「きゃああー!!!」
「黙りなさい」
今度はその光景を見て叫ぶ女生徒の身体が爆発して跡形もなくなる。
「私、人を殺すのはあまり好きじゃないのですが、大人しく言う事を聞いてくれないのなら、それも仕方ないと思ってるんですよ?」
既に三人の生徒が殺された事で全員が黙り込む。
「ふふ、それでは早速皆さんにはこの世界を救っていただきますね、まずは」
「賢者と言うわりには随分と短気な性格なんだな、賢者の娘よ」
一人の男子生徒がユリシアの話を途中で遮る。
「何ですか、あなたは? 私まだ話している途中なのですけど」
「なに、人を殺すのが好きじゃないと言っておきながら、混乱している生徒を簡単に殺すなんて短気な性格だなと思ったんだ、賢者と言うのはもっと器が大きい者のイメージがあるのだが、お前のような短気な者が賢者とは笑えると思ったんだ」
「随分失礼な方ですね」
「事実を言っただけだろ?」
「もういいです、あなたも黙りなさい」
ユリシアが手をかざすと手から光線が放たれ男子生徒に直撃する。
「大人しく聞いてほしいのですけどね」
「そうしてほしいなら、簡単に殺さない事だな」
「え?」
光線が直撃したはずの男子生徒は制服が少しコゲた程度で大したダメージは入っていなかった。
「え? 夏樹君大丈夫なの?」
「ああ、問題ない」
女生徒が心配するが男子生徒、夏樹は何ともない事を伝える。
「どうやら上手く躱したようですね」
「いきなり攻撃するとは、やはりお前は賢者ではない、ただの短気な娘だ」
そう言った夏樹の頭上に雷が落ちて来て直撃する。
「ふふ、今度はちゃんと直撃しましたよ」
「ぷはっ、いきなり雷を落とすなよ、髪の毛が少しコゲてしまったぞ」
「え? 何で雷が当たって無事なの?」
ユリシアの雷魔法をくらって生きている夏樹に驚いている生徒達。
「何で?」
今まで余裕な態度を取っていたユリシアは夏樹を見て少し驚いている。
「全く、賢者の娘よ、今までの魔法はどれも人を殺す気で放っているな、それで人を殺すのが好きじゃないだと? どの口が言うんだ? 短気で人殺しの小娘が」
「余程死にたいようですね」
ユリシアは夏樹に向かって魔法を連発する。
炎、水、風、雷、氷、土など様々な魔法が夏樹に直撃する。
「少しやりすぎましたね」
「少しどころの問題じゃないと思うぞ、賢者の娘よ」
しかし、そこには何事もなかった夏樹の姿があった。
「は、はあー!?」
余裕な感じで話していたユリシアが焦って大声を上げる。
「ありえない!! 何故!?」
「どうした賢者の娘よ、随分驚いてるな」
「いや、私達も驚いてるからね、夏樹君」
「ホントだよ、夏樹、何でお前平気なんだ?」
あれだけの魔法が直撃したのは間違いないのに夏樹が生きている事にユリシアだけでなく他の生徒達も驚いている。
「安心しろ、この場は既に俺のテリトリーになっているからな、ここから出ない限りお前達が死ぬ事はない」
「まさか、何かのスキルを使ったのか?」
「さあ、どうだろうな」
「隠しても無駄、鑑定・・・・・・は?」
鑑定を行ったユリシアはその鑑定結果に口をポカンと開けたまま止まる。
「どうした? 鑑定したんだから、俺のステータスを見たんだろ? チート級の結果に驚いたのか?」
「スキル『ギャグマンガ』?」
『ギャグマンガ?』
ユリシアが言ったスキルにその場の全員の頭に?マークが浮かぶ。
「え? ギャグマンガって、あのギャグマンガよね?」
「ああ、それ以外に思い浮かばないぞ」
「でも、ギャグマンガってスキルなの?」
「最近流行りの異世界物だとこう言った笑わせるようなスキルが実は最強のチートだと言われてるけど」
「その通りだ、俺はここにいた時に異世界転移か何かだと判断して皆が混乱している間に自分のステータスを確認した、そしてこのスキル『ギャグマンガ』を見た時に俺は最強のチートを手にしたと思った、そしてそれを即座に使った、誰かが殺される前にな、どうにか間に合ったがな」
「間に合った? 何を言っているのですか? 既にもう三人も死んでますよ?」
ユリシアの言う通り既に三人の生徒が殺されてしまっているが夏樹は笑っている。
「何がおかしいのですか?」
「三人死んだ? なら聞くがその三人とは、ここにいる三人の事か?」
夏樹が指差した方を見るとユリシアに殺されたはずの三人の生徒がその場に何事もなかったかのように立っていた。
「あ、あれ? 俺、生きてる?」
「え? 何ともない?」
「私爆発したはずじゃ?」
「なっ、なあー!!?」
三人が生きている事にユリシアは驚く。
「な、何で!? 確かに殺したはず!?」
ユリシアの言う通り他の生徒達も同じように驚いていた。
「ありえない、死んだ者が生き返るなんて、ありえない!!」
「そう、普通ならありえない、だがギャグマンガならありえるんだよ」
「何ですって?」
「そうか、ギャグマンガって死んだと表記されたキャラ達も次の話では普通に何事もなかったかのように出て来てるな」
「確かに、ギャグマンガって死んだり生き返ったりを繰り返してるわね」
「そうだ、ギャグマンガに掛かれば、死と言う概念をも覆す、だからこそ三人は生き返ったのさ」
「なら、あなたを最初に殺せば良いだけの事」
「無駄だ、俺がこのスキルを発動させた時点でお前の負けだ、賢者の娘よ」
「何ですって?」
「俺は考えていた事がある、もしも自分が異世界に転移したとしたらどのような力があれば生きていけるのかを、不死身の肉体、想像した物の具現化、魔物の素材を与えれば進化する武器、下位魔法すら上位魔法の威力で使えるほどの魔力量、時間停止、最強の種族達と契約できる力、考えればたくさん思いつくが、俺はどんな相手でもどんな状況でもどうにかできる力を考えた、そして辿り着いた答えがこのギャグマンガだ、ギャグマンガこそ全てを凌駕する力だ」
「何をわけのわからない事を言っている!!」
ユリシアが魔法を放ち直撃するが夏樹の身体は制服が少しボロボロになる程度ですむ。
「普通の漫画なら今ので死んでいるが、ギャグマンガなら大したダメージにならない強固な身体となる」
「確かにビームとか当たってるのに普通に次のコマでピンピンしているわね」
「そして強固な身体だけではない」
「!? 身体も服も綺麗になってる!? いつの間に!?」
気づくと夏樹の身体は綺麗になっていた。
しかもボロボロになっていた服まで綺麗になっていた事にユリシアは驚く。
「ギャグマンガだからこそできる、超回復と超再生だ」
「そう言えばギャグマンガって病院に行くほどのケガを負っても次の場面では普通に全回復してるな」
「ふざけるな、そんなのあってたまるか!! だったらこれでどうよ!!」
ユリシアが手をかざすと夏樹の目の前にドクロが浮かび上がり、そのドクロが奇妙な呪文を唱える。
唱え終わった瞬間夏樹は地面に倒れる。
「はははは!! 今のは即死魔法よ!! いくら回復力があっても即死してしまえば何の意味もないわ!!」
「なるほど即死魔法か、確かに強力だな、だが無意味だ」
「なっ!?」
声のした方を向くとそこには夏樹の姿があるが夏樹の身体は地面に倒れているままである。
「どうなってるの!? 即死魔法で死んだはずじゃ!?」
「言っただろ? ギャグマンガは全てを凌駕すると、さっきお前が殺した三人が生き返っただろ? なら当然自分自身も生き返るに決まってるさ、その前にまずは元に戻らないとな」
夏樹は自分の身体の前に立つと自分の身体の中に入っていく。
すると倒れていた夏樹の身体は起き上がり何事もなかったかのように動かす。
「即死魔法で死なせても、ギャグマンガの前では無意味だ」
「だったら、そのスキルを奪う!! 略奪!!」
ユリシアは夏樹に手をかざして言う。
「ふふ、これであなたのふざけたスキルを奪ったわ、これで終わりよ!!」
「スキルを奪う力か、だが俺のどこにスキルがある?」
「はあ、何言って、はあ!?」
ユリシアは声を上げる。
何故ならユリシアのステータスには奪ったスキル名が表示されてないからだ。
「そんなバカな、確かにスキルを奪ったはずなのに、鑑定!! はあー!?」
ユリシアは夏樹のステータスを鑑定するとそこにはさっき見た時はスキル『ギャグマンガ』と書かれていたのに今はスキルの文字が消えてギャグマンガの文字だけしかない。
「な、何で?」
「当然だ、スキルではなく、ギャグマンガだからな」
「意味がわからないわ!!」
⦅うん、本当に意味がわからない⦆
ユリシアに同意するようにクラスの皆も心の中で同意する。
「わかりやすく説明してやる、ギャグマンガは概念さえも変える事ができる、つまりスキルと言う概念をギャグマンガと言う概念に変えたのさ」
「説明しても意味がわからないわ!!」
⦅うん、全然わからない⦆
またもやユリシアの言葉に全員が心の中で同意する。
「どうした、スキルではなくなったのでスキルを無効化したり封印したりする事も不可能だぞ、何故ならスキルではなくギャグマンガだからな」
「だったら、これでどうだ!!」
ユリシアの目の前に魔法陣が現れそこから巨大で異形な姿をしたものが出て来る。
「で、でけー!!」
「嘘でしょ、あんなのどうやって倒すのよ!!」
その巨大な姿に皆が驚いてパニックになるが夏樹だけは平然と立っている。
「あははは!! 魔法陣で邪神を呼び出したわ!! 神ならあなたのそのくだらない力も終わりよ!!」
「どうやら、お前はギャグマンガの凄さをまだ理解できてないようだな」
「はあ?」
「邪神よ、お前の名は何と言う?」
「頭がおかしいのですか? そんな問いに邪神が答えるわけ」
「俺? ジャグラーって名前だけど」
「何で答えるの!?」
「そうか、ならちょっと待ってろ」
ユリシアのツッコミなどスルーして夏樹はスマホを手に取りどこかにかける。
「俺だ、さっきジャグラーと言う邪神を探していると言っていたな? 目の前にいるがどうする? わかった、ならこのまま閉じるぞ」
夏樹がスマホをしまうと邪神ジャグラーから何かの音が聞こえる。
「あ、俺のスマホか」
ジャグラーはスマホを取り出して電話に出る。
⦅何で邪神がスマホ持ってるのー!?⦆
全員が心の中で邪神がスマホを持ってる事に驚きを隠せないでいる。
「もしもし、あ、エミたん、どうしたの?」
⦅エミたんって誰!?⦆
全員の心のツッコミなど関係なく邪神は話し続ける。
「え? ご飯できたの? もうそんな時間か、わかったすぐ帰るから、うん、俺も愛してるよ~」
電話を終えたのか邪神はスマホをしまう。
「そういう事だから、俺はもう帰るぞ」
「はあ!? 何で!?」
「何でって、妻のエミたんに呼ばれたから」
⦅この邪神結婚してるの!?⦆
神にも結婚と言う概念があった事に皆が心の中で驚いている。
「ちょっと、あなたを呼んだのは私なのよ!? 呼び出したんだから勝手に帰らないでよ!!」
「そんな事言われても、ご飯できてるって言うんだからすぐに帰らないと」
「そんなくだらない事どうでも良いでしょ!! 良いから私の命令に従いなさいよ!!」
「くだらないだぁ?」
邪神がユリシアに殺気を放つ。
「ひぃっ!!」
「賢者の娘よ、今のは失言だぞ、夫婦生活では夫は妻との小さな約束一つ守れなければ破滅すると親父が俺に毎日のように言っていた、お前にとってはくだらなくともそこの邪神ジャグラーにとっては大きな事なのさ」
「その通りだ人間よ、お前の方がこいつよりよくわかってるじゃないか、ところでお前何でエミたんの番号知ってるの?」
「ああ、さっきそこの賢者の娘に即死魔法を掛けられて死んだ時に冥界に行ってな、そこでお前の奥さんに出会ってな、暇だから話し相手になってくれと言われてお前との出会いやどれだけ愛しているかたくさんの惚気話を聞かせてもらったぞ、話を聞いてくれた礼に本当は人間には教えないが一度だけ自分に電話ができるようにしてくれたらしい、もし夫のお前と敵対する事になったら電話してくれれば彼女が夫に言って止めると言ってくれてな、おかげで敵対せずにすみそうだ」
「え? 夏樹君あの時冥界に行ってたの?」
「ちょっと待て、たった数秒であいつ戻って来たぞ?」
「もしかして冥界とこっちじゃ時間の流れが違うって言うあれじゃないか?」
『ああー』
全員が納得した。
もはや夏樹が邪神の奥さんと仲良くなった事に関してはもう何も考えないようにした。
「いや、何で即死魔法でたった数秒の間にそんな事ができるのよ!!」
理解できないユリシアがツッコむ。
「簡単な事だ、ギャグマンガだからだ」
夏樹の言葉にクラスメイトはやっぱりなーと、うんうん頷く。
「だからギャグマンガって何なのよ!!」
「つーわけだから、俺帰るぞ」
「あ、ちょっと!!」
ユリシアが呼び止めるがお構いなく邪神ジャグラーは魔法陣の中へと消えていくのだった。
「さて、そろそろ本当の姿を見せたらどうだ? 賢者の娘よ」
「何を言っているのかしら?」
「とぼけても無駄だ、そもそもこの場所を見た時からおかしいと思っていたんだ」
「夏樹君、どう言う事?」
「見た感じどこかの城だと言うのはわかるが、それにしてはそこの賢者の娘以外は誰もいない、この世界をまだ見ていないからわからないが、城なら王や王妃、国の兵士達がいるはずだが、それが一人もいないのはおかしい」
「た、確かに、こんだけ大きな城ならもっと人がいてもいいはず」
「異世界召喚なら普通王や貴族達がいるし、呼び出された俺達を大人しくさせるために兵士達がいてもおかしくない」
「でも、いるのは彼女だけよね?」
「と言うより、他に人がいない?」
「そうだ、ここには彼女以外いない、なら何故彼女は俺達を召喚した? 考えられるとしたら、もう魔王軍に支配された後か、そもそも俺達を召喚したのは人間側ではない可能性だ」
「どう言う事?」
「俺達を召喚したのが人間達ではなく、敵である魔王軍の可能性だ」
『魔王軍!?』
全員が驚くが夏樹は続きを話す。
「そうだ、実は戦いはすでに終わっていて、魔王軍は人間に敗北した、だが残党達が生き残っていて、人間達に復讐するために俺達を召喚した」
「いやいや、夏樹いくら何でもそんなわけ」
「バレたとあったら、しょうがない」
「え?」
瞬間、賢者ユリシアの身体から何かが抜け出て怪物へと姿を変えていく。
『えぇー!?』
突然の事に全員が反応に追いついていかない。
「この女の身体を乗っ取って、異世界の人間を呼び出し洗脳してこの世界の人間共と殺し合わせるつもりだったが、まさか見破られるとはな」
「いや、全く知らなかったぞ?」
「は?」
怪物が間の抜けた声を出す。
「適当にそれっぽい事を言っただけなんだが、まさか本当に彼女の身体を乗っ取っていた奴がいたとはな」
「はあー!?」
「夏樹君、凄い自信満々に言ってたから、てっきりそうなんだと思ったら」
「当てずっぽうだったんだな」
「貴様!! 人間の分際でなめやがってぇ!!」
怪物の巨大な拳が夏樹に振り下ろされる。
「最初からこうやって叩き潰せば良かったんだ!! 死ねぇー!!」
「なるほど、確かにその巨体で攻撃されたらひとたまりもないが、悪手だぞ、それは」
そう言って夏樹は怪物の振り下ろされる拳を殴る。
「ぐああー!!」
すると怪物が痛みで自身の腕を押さえるが対する夏樹の方は何ともない様子。
「夏樹君、痛くないの?」
「ああ、問題ない」
女子生徒が心配するが夏樹は手をヒラヒラさせて大丈夫だとアピールする。
「な、何故だ、何故お前は何ともないんだ!? ありえないだろ!!」
「お前はまだギャグマンガを理解できないようだな、ギャグマンガは拳一つで大地を真っ二つにできる破壊の力がある、その気になれば世界を消滅させる事も可能だ」
「そんなバカな事があるか!?」
(あるんですよねー)
(地面にパンチしただけで地球が真っ二つになりますから)
「ならばその身に受けて知るが良い、ギャグマンガの生み出す、圧倒的パワーを!!」
夏樹が両腕を広げると周りにロケットランチャーやマシンガンなどと言った威力のある武器が無数に現れる。
「何だその大量の武器は!? どこから出した!?」
「何もない場所から突然武器が現れる、ギャグマンガはそういう空間魔法のような力もあるのさ、撃て!!」
夏樹が手をかざすと全ての武器が一斉に怪物を狙い撃つ。
「ぐおおー!!」
「とどめといこうか」
夏樹がさらなる無数の武器を出すとエネルギーをチャージする。
「ぐ、何なんだ? お前は何なんだ!? ギャグマンガとは何なんだ!?」
「良いだろう、教えてやる、ギャグマンガとは混沌そのもの、無限に生まれる闇だ」
「混沌そのもの!? 無限に生まれる闇!?」
(まあ、混沌と言えば混沌ね、カオスだし)
(無限に生まれる闇っちゃ闇だな、作品たくさんあるし)
「無限に生まれる闇の力に消えるが良い」
無数の武器のエネルギーチャージが終わり一斉に発射され怪物に直撃する。
「ぐああー!! くそぉー!! この俺がこんなわけのわからない奴にぃー!!!」
断末魔を上げながら怪物は消滅するのだった。
「や、やった、勝ったぞ!!」
夏樹が怪物を倒した事で全員が喜ぶ。
「う、ん」
「大丈夫か? 賢者ユリシアよ」
夏樹が目を覚ました賢者ユリシアに話し掛ける。
「はい、ありがとうございます、ようやく自由になれました」
「乗っ取られている間の記憶があるのか?」
「はい、あの怪物は魔王軍の残党で他人の身体に入り乗っ取る事ができる力を持っていました、乗っ取られた私は成す術なく何もできませんでした、このような事になって申し訳ありません、皆さんを元の世界に帰したいのですが、私にはその方法がわからず」
「元の世界に帰る方法か? ふむ」
夏樹が手をかざすとそこに空間が現れる。
「え? 空間が現れた?」
「おい、この空間の向こうにあるの俺達の学校じゃないか?」
「じゃあこの空間を通れば元の世界に帰れるの?」
「帰れるんじゃないか? どう見ても俺達の通っている学校だし」
夏樹が言うとクラスメイト全員が喜ぶ。
「て言うか、夏樹君何でできたの?」
「何かやってみたらできた」
「それってやっぱり」
「ギャグマンガによるものだ」
⦅ですよねー⦆
全員が何も気にせずに納得する。
「さて、元の世界に戻るとしよう」
「あ、待って夏樹君、この空間いつでも出せるの?」
「ん? ああ、普通に出せるぞ」
「だったら、もうちょっと帰るの待って良い? せっかく異世界に来たんだから少し観光したいし」
「実は俺も、ステータス見たら魔法が使えそうだから魔法使ってみたい」
「俺も」
「実は私も」
「そうか、まあ多分異世界召喚された時間帯と同じ時間に戻れるし、問題ないか」
『おおー!!』
夏樹の言葉でクラスメイト達はしばらく異世界を楽しむ事に決まった。
「さて、賢者ユリシア、この世界を案内してもらえるか?」
「はい、私で良ければ」
「そうと決まればこんな場所さっさと出ようか」
「え? ひゃっ!?」
夏樹はユリシアをお姫様抱っこする。
「あ、あの」
「長い時間身体を乗っ取られていたんだ、体力も消耗しているはずだ、無理に動かす事もない、嫌なら女性達にお願いするが」
「い、いえ、よろしくお願いします。」
⦅あ、これ決まったな⦆
顔を赤くしながら夏樹にお姫様抱っこされるユリシアを見て全員が察するのだった。
それからしばらく異世界を楽しんでから夏樹達は元の世界に召喚された時間帯に戻るのだが、賢者ユリシアも一緒に来る事になった。
異世界で共に過ごした事によって夏樹とユリシアは付き合うようになって、家族に紹介したら妹からどうやって付き合う事になったのかと聞かれたので夏樹はこう答えるのだった。
「ギャグマンガは世界を救うのさ」
読んでいただきありがとうございます。
どんな世界に転移、転生しても生きていける力って何かなと考えたら思いついたのがこれでした。
ツッコミどころが多いと思ったら、それはギャグマンガだからです。