1話
国王がいなくなり、主人を失った。
私は影の組織、傀儡として国王に仕えていた。先代の傀儡の王が逝去され、実力を買われ当代の傀儡の王となるが、王
が死に仕え先を失った。
傀儡の王として各地に放たれている傀儡を集めなければならない。
「気にするな。これは私が悪いのだ…すまない」
これが国王の最後の言葉だと聞いている。
傀儡の王は冒険者として旅に出る。
―
「お兄さんこれからどこへ?」黒いフードを目深に被り、全身のラインが全くわからないコートを羽織っている。
「ジャバラへ頼む」
「ジャバラね。お兄さんも物好きだね、あんな治安が悪い街に行くなんてな」
「知人と逢うために」
「へぇ、そうか。それじゃ行くぜ」
馬車に乗り腰を掛ける。
整備されていない道は身体に響く。
「お兄さんはどこの出身だい?」
「サンテン」
「へぇ、それは残念だったな。まさか国王様が亡くなって占領されるなんてな」
「詳しいんだな」
「こんな仕事しているとな、噂はよく耳に入ってくるんだ。サンテンの王様は素晴らしかったんだけどな。あいつらのせい
で…全く」
「そうだな…」
―
「すまない、助かった」
「あぁ、気にするな。どうせ通り道だ。また会えたら今度は物を買ってくれると助かるぜ」
「そうしよう、次会えたらな」
「そうだな、生き残ってくれると俺も後味がいいぜ」
「金剛だ」
「コンゴウ?聞きなれねぇ名前だな。俺はザッカスまたな」
「ああ」
街の扉を開く。
人はいるものの、あるものは地面を見つめ、あるものは虚空を見つめる。
焦点が定まっているものは少ない。訪問者が珍しいのか窓からの視線がいくつか刺さる。
「まずはこの辺りにいる蒼玉を探さなければ」
傀儡の生き残りを求めて、街を遊歩する。