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弱肉強食の学校  作者: ルナ
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学園

 俺こと、石原連は名門と名高い英才学校に所属している一年だ。受験倍率なんかものすごく高く、入るのに一苦労するのだが、卒業するのも難しいのがこの学校の特徴の一つでもある。その理由に、定期テストで一つでも赤点を取ったら即退学になる鬼畜設定がある。他にも校則は緩いが、その校則を破ったら退学になるなど、最終的な卒業人数が入学時点の人数の一割になったケースだってある。


 これだけの理由だとさすがに九割が退学になることはないだろう。退学要因の主な理由が、決闘によるマネー不足だろう。


 決闘を説明するには、まずマネーの説明が必要だろう。マネーとは、各々が持つポイントだ。毎月一日に最も多くマネーを持っていた生徒に、報酬が与えられ、それは月々によって変わってくる。しかし、毎月一日に百マネーを切ると、カーストが下げられ、ワーストカーストで百マネーを切ると退学になってしまう。マネーは結果が出てから、リセットされまた、学校からマネーが配布される。


 さて、ここでまた新しい言葉が出てきた。カーストだ。カーストとは、三十人のクラスメイトを先月のマネー獲得数上から五人ずつ分けたグループのことだ。上からトップカースト・セカンドカースト・サードカースト・サードワーストカースト・セカンドワーストカースト・ワーストカースト、だ。


 ここで、決闘の説明に移ろう。決闘とは、各々のマネーを賭けて戦う、賭け試合のことだ。通常、同じカーストか上のカーストの人としか決闘は挑めない。そして、上のカーストの人に勝つと、ボーナスとして獲得マネーの一割が貰える。


 決闘の内容は挑んだ側が考え、誓約書に明記し、挑まれた側に承諾のサインを貰うことで決められる。つまりは、自分に不利な内容だと思ったら逃げてもいいということだ。運動系の五十メートル走や勉強系のテストだったり、頭脳系で言うと、ボードゲームだったり、独自で考えたゲームだったり、試合内容は多種多様だ。


 こんなところでこの学校の説明は終わりだろう。あとは、普通の学校と同じく、体育祭とか修学旅行なんかもあったりするごく普通の学校だ。


 こんな説明を入学当初に行われ、そんな学校と知らずに入った俺は心底驚いたのが記憶に新しい。て、なんでこんなことを考えていたかというと、今日が五月一日。つまり、クラス内カーストが決まり、マネー獲得数が一番多い生徒が決まるからだ。


 入学当初のマネーは生徒一律十マネーだった。つまり、学校からは毎月十マネーもらえるということだろう。四月は、カーストがないため、誰にでも挑むことができたし、百マネーを切っても特にダメージはない。


 俺はこの一か月特に何もしなかった。挑むこともなければ、挑まれても無視していた。だから、十マネーのまま変わっていない。誰が何に対してどんな才能を持っているか分からない状況で決闘をするほど俺は、驕っていない。


 今は朝のホームルーム前。今からけっかが発表されると、担任の一之瀬先生は言っている。周りを見渡しても、こんなことをやるのは初めてなのか、みんながわくわくしたようなッ機体の眼差しを担任に向けている。かくいう俺も結構楽しみである。


「それじゃ、黒板に貼るから自由に見てくれ」


 と、一之瀬先生は言い、黒板から離れる。その瞬間多くの生徒が席を立ち、黒板の前に集まる。俺はスマホのカメラ機能を使って倍率を上げ、黒板に貼られたポスターを見る。


『クラス内マネー所持数順位』

一位 如月千歳:百五十枚

二位 宮島恭介:三十二枚

十五位 石原連;十枚


 ふむ、中間か。俺はセカンドカーストになるのか。やっぱり、先月は動かない生徒もいたらしく、同率が何人かいる。幸いにも退学者はおらず、カースト制度もそのまま使われる。・・・まだ説明されてないが、退学者が出た時はカースト制度に何らかの影響があるだろう。


 それにしても凄いな、一位の如月千歳。二位と大差をつけて一位に君臨している。それは、クラスメイト全員も確認したらしく、どよめきが走っている。どうやっただとか。不正じゃね?だとか。・・・全くもって意味不明だ。まだ、誰の情報も知らない状態だというのに不正とか何とかいうは愚の骨頂だろう。


 いや、俺だけか。情報を知らないのは。このクラスでボッチは俺だけだからな。隣の席のやつは、学校に来た瞬間寝ているのか、俺が来たときは寝ているし、放課後まで寝たまま過ごし、帰りもいち早く出るから話しかける時間がない。起こすのも忍びないしな。そんなこんなで、自分から話しかけに行く選択肢がない俺は、そのままボッチ街道を突っ走ってしまいそうだ。


 そんなことはどうでもいい。まずは一位の報酬がどれだけの物なのか、それが一番気になることだろう。他の生徒も一番に気にしているだろう。他のクラスと一緒なのか、それともクラスによって違うのか、とかな。


 如月に注目が集まる中、声を発したのはその中心にいる如月だった。


「皆さん報酬が気になると思います。今さっき私のスマホに通知が来ました。報酬は・・・マネー獲得二倍というカードでした」


 報酬は、さっき各々のスマホに入れたアプリ『英才個人ボックス』というアプリに通知という形でくるみたいだ。このアプリは決闘にも使うもので、俺は使ったことはないのだが何かと便利らしい。誓約書作りや、掛け金の設定など、この学園で必須アイテムだろう。


 さて、報酬の話だが・・・獲得二倍か。俺はてっきり退学阻止とか、内申点一アップとか、テストの点の増加とかその類だと思っていたんだが・・・。まあ、報酬は変わるみたいだし、取れそうだったら一位取ってみるか。


 ホームルームが終わり、一時間目の数学の授業が始まる。この学校は、テストの難易度然り、授業のスピードも高く、早い。しかし、ノートを取らず、ワークの類がないため教科書を見ながら、担当先生の話を聞くだけでいい。だから、意外と追いつけないレベルではない。


 隣のこいつは大丈夫だろうか。当然のように授業を聞いておらず、小さな寝息を立てている。先生がそれを注意するそぶりはここ一か月一切なかった。他の生徒に迷惑をかけない限り特に注意することはないのだろう。


「ここで、小テストを始める。時間はこの授業が終わるまで。赤点を取った生徒は退学だから注意するように。質問はあるか?」


 突然の小テスト宣言。しかも赤点で退学ときた。生徒がざわめきだす傍ら俺は隣の名も知らぬ女学生に声をかける。


「おい。小テストだってよ。赤点で退学ときた。やらないとお前退学だぞ」

「う~ん。うるさい。」

「そうか」


 俺は声をかけながら体を揺さぶる。少し起きたが、俺に文句を言った後、すぐに寝てしまった。俺も注意する理由もないため、放置する。そんなことを思っていると、


「退学は少し理不尽じゃありませんか?」


 と、名も知らぬ女学生ツーが声を上げた。その内容は、テスト結果の影響による文句。まあ、俺も思ったが、赤点とらなきゃ問題ない。そう思ってるんだが、どうやらこいつは勉学に自信がないということだろう。


「そうは言っても、学校の決まりだからな、逆らうことはできない。逆らいたかったら退学しろ」


 無慈悲に繰り出された先生からの言葉。正論だからか、女学生ツーも、おとなしく手を下げた。そのすぐあと、もう一人名も知らぬ男子学生が手を上げた。


「先生。赤点の基準はなんですか」


 聞く順番が逆な気がするが、退学という言葉結構インパクトがあったのだろう。基本、赤点は平均点の半分だと思うが、この学校では違うのかもしれない。聞くやつがいなかったら、俺が質問していた内容だ。


「この学校では基本的に百分の三十だ。つまり、百点満点の計算で三十点以下、ということになる」

「ありがとうございます」


 これは・・・まずいかもしれない。普通の定期テストと同じぐらいの難易度なら問題ないが、この小テストが極端に難しかったら退学になるかもしれない。


「だが、例外として、退学回避や点数アップのカードを持っていた場合退学は免れる。だから、クラス一位は積極的に狙っていけ」


 クラス一位とはマネー所持数のことだろう。つまり、クラス一位になることによって報酬として赤点回避のカードを貰えるということだ。思わぬところで新たな情報を知れた。これは、本格的に狙った方がいいかもしれない。


「もういないか?んなら配るぞー。カンニングはゼロ点扱いだからな」


 先生が一枚の紙を席の先頭に配っている。クラスのみんなも一様に緊張しているのが肌で分かる。だが、例外として、俺の隣にいるこいつはいつの間にか起きていて、教科書の類は椅子の下に置いてある。こいつも退学は嫌だということか。


 俺の席は一番後ろの一番窓側だ。つまり、主人公席というわけだ。だから、当然一番最後に小テストが渡り、一番最後に名前が書き終わる。配られた瞬間からテスト開始なわけだから、少しばかり俺に不利だが、誤差の範囲だろう。


 名前が書き終わり、問題に目を通した俺は驚愕した。全く分からないからだ。俺は授業はそんなに聞いてないし、家で復習も予習もしていない。だが、これは赤点続出じゃないか?少なくとも隣のこいつは赤点を取るだろうと思うほどだ。


 俺は分からないところは飛ばし、一応時間切れになる前に最後の問題にたどり着けた。多分俺は半分くらいの点数だろう。赤点はないが、油断できない点数だ。隣のこいつは諦めたのか、それとももう終わったのか、俺が最後の問題を解いている時にはもう机に伏せていた。


 一時間目の終了を知らせるチャイムが鳴り、みんなシャーペンを置き伸びをしている。


「んじゃあ、後ろから回していけー」


 俺は前にいる名も知らぬ男子ツーに小テストを渡し、隣にいる名も知らぬ女学生に声をかける。


「なあ、このテストどうだった?」

「ん・・・誰?」

「隣の席の石原連だ。で、このテストの難易度はどれくらいだ?」

「ん・・・そんなに難しくなかった・・・これでいい?ねむい」

「ああ、ありがとう」


 すごいな。これを簡単というとは。こいつ天才か?それとも夜に勉強する秀才型か?そんな俺の考えに一切興味がないみたいに、俺との話が終わった瞬間速攻で寝てしまった。紫色の髪の毛が重力によって下に落ち、それによって気持ちよさそうに寝る寝顔がよく見える。


 そんなこんなで、何事もなくはなかったが、退学を回避しそのあとはいつも通りの日常を過ごした。明日からは、退学と隣り合わせの日常を過ごさなきゃいけないのか。と、憂鬱な気持ちで、ホームルームが終わった教室を後にした。



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