【四コマ漫画風短編小説】先生、プレゼントは私です
アンリ様主催の「クリスマスプレゼント企画」への参加作品です。
『プレゼント』と聞いて「プレゼントはわ・た・し」を思いついてしまったので、ようやく名前を決めた突撃女子高生の登場と相成りました。
ざっくりキャラ紹介。
女子高生……いとこで高校教師の先生が子どもの頃から大好きで、料理の腕を磨いたり、高校に首席合格したり、両親と学校の理事長や校長を説得して婚約者(口約束)になったりと、色々頑張る子。
先生……女子高生の好意は理解しているものの、赤ん坊の時から面倒を見てきて、おしめまで変えた事のあるいとこの女子高生に恋愛感情はないが、親戚だし可愛がってはいるので突き放す事もできない難儀な立場。独身。彼女いた事なし。
単品でもお楽しみいただけますが、シリーズにしてみましたので、以前の作品もお読みいただけましたら嬉しいです。
【クリスマスが今年もやって来る】
「先生、クリスマスですね」
「そうですね」
「今年は私からとっておきのプレゼントがあります」
「そうですか」
「じゃじゃーん! 何とプレゼントは私です! さぁどうぞ受け取ってください」
「お断りします」
「どうしてですか」
「毎年断られているのに、なぜ今年だけ行けると思ったのですか」
【前しか向かない諦めない】
「去年が駄目だったから今年も諦めるのではなく、今年は何かが変わると信じる事が、未来を切り開くんです」
「その前向きな姿勢は、教師としては否定しづらいのですが」
「教師の責務として受け入れましょう」
「教師の責務として、生徒の求婚は断らないといけません」
「ならば教師としてではなく、生まれた時から側にいる男性として、私に向き合ってください」
「だからこそ恋愛感情が全く湧かないと言っていますのに」
「共にいる時間が長い程、愛は深まるものです」
「顔を突き合わせて十八年。そろそろこの平凡な顔に飽きても良い頃合いだと思うのですが」
【首をいっとけ】
「なんて驚かせてみましたけど、ちゃんとしたプレゼントもあります」
「驚きはしていませんが、別でプレゼントを用意していた事に驚きました」
「毎年先生に材料費を出してもらっての手料理で済ませていましたからね」
「それはそれで貸し借りなくてありがたいのですが」
「今年はこちらです! じゃじゃん!」
「ネクタイですか」
「プレゼント言葉は『あなたに首ったけ』です」
「君からもらうと『首に縄をつけますよ』的な意味が感じられて怖いですね」
【欲しいのはあなた】
「しかし困りました。そうとは知らず、プレゼントを用意していませんでした」
「そうしたらリクエストしても良いですか?」
「構いませんが高い物は勘弁してください」
「大丈夫です。無料のものですから」
「キスや添い寝など過度の接触系は駄目ですよ」
「残念です。ならば記名済みの婚姻届を」
「明日まで待ってください。ちゃんとしたものを買ってきますから」
【徳政令を知ってるか】
「買って来なくても良いですよ」
「しかし大人として、年下のいとこであり生徒である君から貰いっぱなしというのは良くありません」
「真面目な先生素敵」
「君に借りを作ると、何をされるかわかりませんし」
「何にもしませんよ。私が先生に喜んでもらいたいから、しているだけです」
「その気持ちを否定しはしませんが、それでも借りは借りです」
「どんなに借りを作っても、結婚さえしてしまえば全て共有財産ですし」
「ほらご覧なさい」
【願い事一つだけ叶えてくれるなら】
「じゃあ一つお願いがあります」
「お手柔らかにお願いします」
「名前で呼んでください」
「名前、ですか」
「いつも『君』では寂しいです。ちゃんと呼んでください」
「田主さん」
「それでは学校と一緒じゃないですか。今からお願いをキスや添い寝やそれ以上に切り替えても良いんですよ」
「プレゼントで脅迫とは、クリスマスを何だと思っているんですか」
【想定外な想定内】
「無理な要求の後に簡単に思える要求、ドア・イン・ザ・フェイスの活用ですか」
「わかっちゃいましたか。やはり私と先生は通じ合ってますね」
「策を看破されてもこの態度」
「それくらい想定済みですから」
「それではこの後私がどうするかも予想してると」
「きっと渋々でも一回は呼んでくれると思ってます」
「千夜子さん」
「!」
【愛が溢れて止まらない】
「これで良いですか」
「も、もう一回お願いします!」
「千夜子さん」
「〜〜〜っ! つ、次は呼び捨てで!」
「千夜子」
「やばい鼻血出る! あ! 録音もお願いします!」
「名前を呼ぶだけで喜びすぎでは」
「そう思うなら日頃から呼んでください。ティッシュティッシュ」
【幸せを噛み締めて】
「はぁ……。堪能しました……」
「それは良かった」
「これで向こう五年、先生に冷たくされても平気です」
「いささか軽率でしたかね」
「素敵なプレゼントをありがとうございます」
「喜んでもらえたなら、まぁよしとしましょう」
「ついでに先を見据えて『お前』『あなた』呼びも試してみませんか?」
「やはり物理的に何かを買わないと、終わらない感じですねこれは」
【クリスマスの奇跡】
「逸人さん」
「その呼び方は駄目だと前に言ったはずですが」
「今日だけ許してください。何と言ってもクリスマスですから」
「今日だけですよ」
「はい。今日だけです」
「今日を突破したからまた折を見て、と思っていませんか」
「昔みたいに『おにぃ』って呼ぶのとどっちが良いですか?」
「分かりました。クリスマスに免じて野暮は言いません」
【一夜明けて】
「え、これ……!」
「僕からのプレゼントです」
「すごい地味なペンケースですね。先生らしくて素敵」
「気に入らないなら捨てても構いませんので」
「先生からもらったものは、たとえ切った爪でも大事にします!」
「あげる予定はありませんけど、その場合は捨ててください」
「あぁ嬉しい。ショーケースに入れて家宝にします」
「そこまでしなくてもいいですが、受け取った以上これで貸し借りはなしですね。呼び名も今まで通りに戻します」
「図りましたね。でも嬉しすぎて返せない」
【来年の事を言うと鬼が笑う】
「来年こそは私を受け取らせてみせますよ」
「無理だと思いますが頑張ってください」
「裸にリボンを巻き付けて訪問すれば、先生も受け取らざるを得ないはず」
「田主家と乃木身家まとめてこのマンションから出て行く気ですか」
「そうしたら夢の二世帯同居ですね。庭付きが良いです」
「悪い事を考える子にプレゼントはあげません」
「あぁ! ごめんなさい! 裸リボンは冗談ですから! 地味なペンケース返してください!」
「全く、君がサンタを必要としなくなる日は、いつになるのでしょうね」
読了ありがとうございます。
さて、ようやく決まりました突撃女子高生の名前は、
田主=dash
千夜子=charge
どちらも突撃を意味します。
対して先生はと言うと、
乃木身=躱す
逸人=逸らかす人
となっています。
この二人はお気に入りなので、名前決めも頑張りました。
こんな勢いばかりのコメディーですが、楽しんでいただけましたら幸いです。