表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とある精神病患者の『死生観』

 いつ頃だったろう……まだ色んな心療内科や精神科に行っては先生と話をして、どの先生が自分に合うか合わないかを探してた頃だったと思う。


 今の主治医の先生は最初から割りと相性が良い感じがしたので何回か受診をしていた。


 その頃の私は兎に角、鬱症状が特にひどく口を開けば「死にたい」「死にたい」と言っていたと思う。


 その度に先生は私に「死んじゃダメだよ」「死ぬのは怖い事だよ」等と言われていた覚えがある。


 そんなやり取りの中で、私は先生に私の持つ『死生観』と言う物について話した事があった。


 つい先頃、同じ病気や悩みを抱えた人達が集まり、自分の悩みや愚痴を話し合うちょっとしたディスカッションのような物があった。


 当然、私は人前で話す事どころか人と目を合わす事すら出来ないので不参加を決め込んでいたのだが、先生の強い要望によりその場に居るだけでもいいから。と参加する事となった。


 車座に椅子が並べられ、5~6人の人達がそこに座り私は1人、離れた壁際に立っていた。

私のように人が苦手な人の気持ちを理解してくれる人達が大半のようで、私が1人離れていても特に何か言われるような事も無かった。


 精神科の先生がホワイトボードにそれぞれ持つ悩みや今の心境や愚痴などを書いていく。

そんな流れの中で私が最初から予想していた【死】についてその場の話の主流が流れていった。


 それぞれ色んな意見を言い話し合う中、少し場が落ち着いた時に突然、精神科の先生が皆にこう話し始めた。


 「今から先生が1つの例えを話します。この例え話しは昔、とある患者さんから聞かせて貰った【死】と言う物に対するその人の持つ価値観いわゆる死生観と言うやつです。先生はその話しを聞いた時に、物凄く感心させられてしまいました皆も聞いてみて下さい」


 そう言って先生は1人1人を見渡すように話し始めた……


 死ぬ事が怖いの?死ぬまでの過程が怖いの?

私は死ぬ事自体は怖くは無いよ。『今から自分が死ななきゃいけない』という死ぬ事の過程はとても恐ろしいけどね。例えば病気で苦しんで死ぬのかも知れない。事故でひどい怪我をして死ぬのかも知れない。首を吊って苦しみながら死ぬのかも知れない。手首を切って赤い血を眺めながら死ぬのかも知れない。


 どんな死に方にしても、死に終わるまでは恐怖で心は一杯になると思う。だから、私は死ぬ過程が物凄く怖い。だから私は今までに1度も自殺なんて考えた事すらない。私はビビりだからね。


 先生は夢すら見ずに熟睡した事はあるよね?

その時の先生は『私は今、夢すら見ずに熟睡している』って自覚した事が今までに一度でもある?


 寝ました。夢すら見ずに熟睡しました。ある程度の時間が経過したら目が覚めました。


 その寝ていた間の時間は、自律神経なりなんなりが勝手に呼吸をして心臓を動かして脳を休ませて【寝る】と言う状態にしてただけだよね?


 自我や自意識があり【私は今寝てるから寝てるように生きる】なんて事をしている?


 死んでからの事を怖いと思うのは、死んだ後の事を想像するからだよ。死ぬというのは2度と目覚めないだけの熟睡と同じだよ。寝てる間の自分に自我が無いのと同じで、死んだ後の自分にも自我は無い。


 寝て明日必ず起きる。って誰かが保証してくれて毎日寝てるの?


 そう言って先生の話は終わった……


 先生の話しを聞いた人達は、死んだ後についての恐怖を和らげる人も居たし、強固に反対する人も居たし、自分なりに考えてる人も居た。


 そして先生は「世の中には色んな考えがあって本当に楽しいよね、皆さんも自分なりに考えてみてね」そう締めくくりディスカッションを終わらせた。


 この精神科の先生に出会って間もない頃にクソ生意気に自分の【死生観】を教え聞かせるように話した私は、壁の方を向き照れ臭さで、1秒でも早くその場から逃げ出したかった……まさか、あんな昔の事を覚えられてるなんて……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ