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雨に濡れた白いキャンバス

乾いた空のような

作者: 脇田 柚夏

「なっちゃん! 遊ぼう」


と、昔誘ってくれた友達のことはよく覚えている。この時、初めて見えた。

黒い影がつきまといながらも、純粋で美しい色をしているおともだち。笑いながら遊ぼうといっていた。


私は慣れてた。

人の後ろには必ず影がついている。

だから、友達の後ろでは影が笑っている。

時には、影と重なっている人もいる。染まっていると言ってもいい。

慣れてしまった。生まれた時から見える人の影に。



そしてある日のこと、

揺れる草々に囲まれた私は遠くを見ていた。



「あの有名な映画では、暗くなったら出てくる黒い影のようなのが、ずっと見えるのよね」



誰にも分かってくれないだろう事実を何となく口に出した。

慣れてるとはいえ、怖いものは怖い。今は、何も起こらないだけなのかもしれないし・・・・・・・

もしかしたら「み…いぃつけぇた…」と言って、襲ってくるかもしれない。


ここで「見えている時点で何も起こらないって言えないでしょ」と突っ込んでくる人は、あいにく居ないのだ。


そう、いつもは━━━━━━━━━━



「あらら、見えている時点で起こってると言うべきじゃなくて?」



コロコロと幼さがある声で笑う。まるでどこぞの令嬢みたいな喋り方だ。

誰だろう?


振り返ると、姿6、7歳くらいの少女が笑っていた。


私も10歳だけどね。


綺麗な青。しかし、よく見てみると少女は、乾いた空のような綺麗さで、どこか悲しい色が、広がっていた。



「えっ…?嘘……」



いつも通り、影が居るだろうと見てみたが、少女には、影がついていないのだ。

さっきも思ったが、その代わりというか…悲しい色に染まっていた。



「こんにちは、良家のお嬢様という感じかな。 お名前教えてくださる?」



まるで、大人のような喋り方だ。良家のお嬢様って、貴女のことではないの???


まぁ・・・・・・否定はできない。

私の家は、人脈(コネクション)も広い、大手企業を経営している。だから、振舞い方や教養は幼い頃に身につけた。


でも、学校ではお父様やお母様、お祖父母様のことも話してない。お姉様の自慢はしたことはある。ただ、絵が上手とかそういうことだ。他は、話すつもりもない。


みんなは、知ってるかもしれないけど……

親あたりから聞いてるだろう。態度でわかる。


大手企業の娘だからこそ、怖かったのだ。周りの大人、年長者ほど影に染まっていることが目に見えた。染まっていくところが見えた。染まる瞬間に影が「みつけた」と言うように、笑う。全ての笑顔が怖く見えてきた。



「私は、か……いや、夏海(なつみ)と申します。 あなたは?」


名字は言わないことにした。幼いから大丈夫だとは思うけど、名字を言ったらよってくる人も少なくない。

そして、丁寧な口調で言った。相手が他企業(ライバル)の子だったら後で困るのよね……


少し考えながら少女は私を見た。



「…シトロンと、呼んでくださいな」



言外に、名前は言えないと言っている。

それにしても……



「柚?」



少女は、いたずらっ子のように「シトロンです」と言った。

しかし、その色は変わらない。



「では…シトロンには見えるの?」



「見えるわけではないの。 ただ、()()()()だけ」


シトロンは、信じたではなく信じれると言った。なにか、根拠があるのだろうか?



「だから、私には本当のことは分からない。気分を悪くしたらごめんなさいね。 その力は、確かに怖いものかもしれない。でもね、それはあなただけの特別なもの……。 特別な経験ができるの」



年下の子に言われるのが中々、、シュールな感じだけど、自然と心に入ってきた。



「例え、それがどんなに悲惨な運命でもそのことは変わらないんじゃないかしら。 と、呟いてた人がいたわ。 私には理解できない部分もあった。 でも、いずれかはそう堂々と言えたらなって思ったわ」



最後の言葉で、綺麗事すぎると思った私はいなくなった。



「あっ、じゃあね。 約束があるからもう行かなきゃ」



友達と遊びに行くのだと言うように言う。その時、シトロンの悲しい色は濃くなっていた。



「ありがとう。 シトロンの色はとても綺麗で美しいよ」



さらに、悲しみの色は強くなる。


「冗談がお上手で」



その時、私自身も悲しい色につつまれた気がした。



「あっあとね、さっき言ったことは、神楽璃子(かぐらりこ)ちゃん、、あなたのお姉様がよく分かってると思うわ」



何故…??

そう思った時には少女は消えていた。


空を見上げると、シトロンの色が広がっていた。



・・・・・・・そんなことが昔あった。あの時から何年たったのだろうか。



そういえば、人間ならば、生きているならば影はついている。

光が強いほど影がこくなるとも聞いたことがある。


でも、それは生きているからこそ、持てる特別なものであり、目を逸らしてはいけないものだ。そう、いま実感している。


そして、あの少女は、生きているなら持っているはずの影がなかった。

少女は、影とひかり以外を持っている2人めだ。1人めはお姉様。影もついているが、孤独な色に染まっていた。


多くの影を持っている人はひかりも強い。 だからこそ、人生が楽しいものに感じたりもする。


影がないのは、、

とても清い人間なのか。

影は無いのか。

悲しみ飲まれたのか。

人でないのか。


とにかく少女、シトロンは、悲しみに満ちていたのだ。


不思議な少女だった。



あなたはなに色ですか?

これが私のホラーです。

また、このお話に出てくる人物はシリーズ「雨に濡れた白いキャンバス」に出てくる神楽璃子の妹、そして少女です。


少女は「ひみつ」と言う 短編集

⬆少女がどんな子なのか知りたい人は是非お読みください。


お読みいただきありがとうございました。

応援よろしくお願いします(_ _*))

そして、これからもよろしくお願いしますっ!


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