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05.そこらの神々などより強くなければダメなのだよ。


アウインが、


「アクアオーラ様がまだ生きておられる?しかも2人の子持ち?え?もしかして旦那様は魔族?えぇ?」


と、目を白黒させてる間にも、女神ウヴァロヴァイトの声は続く。


『にも関わらず、あなた達はまだ聖女召喚や勇者召喚を行っております。その原因は神であるわたくし達が、聖女や勇者に過分な加護を与えたが故ということは理解しております・・・。しかしわたくし達は、魔族が去った後に召喚された聖女や勇者達には、それまでの様な加護は与えておりません』


「やっぱり・・・そうですよね」


「ああ、必要ないからな」


『この星の者たちが召喚してしまった方達にはお詫びとして、元の世界に帰る以外の希望を個別に叶えてきました。しかし、これ以上無意味な召喚をする事を、わたくし達は望んでおりません。どうか、召喚を撤廃して欲しいのです』


何気に神々はアフターケアをしてくれていたらしい。


「あの、魔王陛下・・・。神様が12柱もいるならば、なんかこう・・・不思議パワーみたいなので一方的に撤廃できないんですか?」


「この星を創った神達はあまり力が無い下っ端の神々だ。だからそこまで力がないのだろう。私でも簡単に滅ぼせる程度の弱い神々だしな」


ユークレースの神々簡単に滅ぼせる宣言に、アウインはピシリと固まった。


「ああ、滅ぼせるだけで、滅ぼしてないぞ?言っただろう、話をつけてくると」


ははは、と笑うユークレースの声で、アウインの硬直が解けた。


「さ、さすが魔王陛下といいますか・・・ベリル王妃様の伴侶というのが納得です・・・」


「そうだろう?我が愛しの愛しの愛しの妃であるベリルは美しく凛々しく清廉で怜悧で時におっちょこちょいで時に小悪魔のようで時に母のように慈愛に溢れそれでいて妖艶で可愛らしく愛しく愛しく愛しくて愛しくて愛しくて愛し過ぎる我が最愛のベリルの夫でいる為には、そこらの神々などより強くなければダメなのだよ」


突然、ベリルに対する愛しさを息継ぎもせずに語り出したユークレースに、アウインが目を瞬かせる。

しかし、恍惚とした顔でベリルへの愛を語るユークレースは、とても幸せそうだ。

そういえばベリル王妃様が新婚だと言っていたな、と思い出す。


「魔王陛下・・・いえ、ユークレース国王陛下。我々の星で行われていた忌々しい召喚の儀式の撤廃に尽力して頂き、感謝申し上げます」


そう言ったアウインが跪き、深々と頭を下げた。


「アウイン、頭を上げよ。この程度なら力を貸した内にも入らぬ・・・そうだな、どうせなら・・・ふむ、もう一度天界に行ってくる」


何かを思いついた様子だったユークレースが、またもやアウインの目の前からヒュン!と消えた。



10分後。


ヒュン!とユークレースがアウインの目の前に戻ると同時、またウヴァロヴァイトの声が響いた。


『あ、あとですね、この星の全ての召喚魔法陣を永久凍土で覆ってもら・・・覆いました。もし今後、またこの星に脅威が訪れ、どうしても聖女や勇者の力が必要になった時には、その永久凍土は自然と溶けるそうで・・・溶けます。その時召喚される聖女や勇者はとても強いらし・・・ええと、強い者が来るようにしたので心配はいりません。そしてその者達ならば、自分達で元いた星に帰る方法を持っています。ですので王家や皇家に迎える必要はありません。むしろ、迎える事の無いように!えー、以上がこの星の神々の一柱である女神ウヴァロヴァイトからのお願いでした。天界からは以上です。ごきげんよう!』


初めは堂々とした神様っぽい喋り方だった女神ウヴァロヴァイトだが、段々と「言わされてる感」が混じり、最後は魔法放送で見る報道リポーターの『現場からは以上です!』みたいな感じになっていた。


アウインは、永久凍土で覆ったのはウヴァロヴァイト達神々ではなく目の前のユークレースと言う事に気付き、また頭を下げた。


「ユークレース国王陛下、何から何まで、本当にありがとうございました」


「良い。これで憐れな召喚被害者がいなくなるだろう。それにもしこの星の脅威が現れた時には、ターフェアライトの私の部下が召喚されるようにしておいた。その者達ならば私やベリルが迎えに来れるから、一方的な召喚で終わらずに済む」


「なんと・・・お優しい・・・くっ!さすがベリル王妃様の」


「そうだろう、そうだろう。我が愛しの愛しの愛しの妃であるベリルは美しく凛々しく清廉で怜悧で時におっちょこちょいで時に小悪魔のようで時に母のように慈愛に溢れそれでいて妖艶で可愛らしく愛しく愛しく愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて──」


今度は食い気味にユークレースのベリルに対する愛しさ語りが始まったが、アウインは止めることも無く、微笑みながら聞いていた。


そこで今までずっと部屋をぐるぐる回るように走り回っていたブタのアルマンディンが、ついに目を回してデカブタにゴン!と体当たりした。


「あ・・・忘れていましたが、ユークレース国王陛下、こいつらどうしましょう?」


アウインは、気絶しているデカタコ、チャルアイトの氷の像、そして目を回しているブタを指した。


「そうだな、記憶を改ざんして、先程のウヴァロヴァイトの言葉を入れておこう」


ユークレースは以前アウインの見ている前でベリルがやっていたように、ちょいちょいと指を動かして記憶を改ざんした。


「さてアウイン。この星は今よりはマトモになって行くだろうが、この国・・・えーと、カルサイト王国だったか?ここの王家がこのクズ共なのは変わらないだろう。其方の婚約者が是と言うならば、婚約者と共にターフェアライトに来ないか?」


「え・・・」


「直ぐにとは言わぬ。アウインの家族や婚約者の家族の事もあるだろうしな。これを其方に渡しておく。答えが決まったら知らせてくれ」


ユークレースはどこから取り出したのか、手のひらサイズのピラミッド型の置物の様なモノをアウインに渡した。


「これは・・・?」


「これは通信機の魔法具なのだが、ここ・・・このボタンをポチッとすると、私の部屋にある通信機と繋がる」


「わぁ・・・魔法具なのにボタンなのですね?魔力は通さなくていいのですか?」


「ああ。ターフェアライトで作る魔法具は全て魔力を持たない者でも使えるように作ってある」


なんという親切設計か。


ベリルとユークレースは、今までアウインが想像していた魔族のイメージとかけ離れていた。

2人は過去に脅威とされた魔族とは明らかに違う。

人間の王族よりも数段に高貴で気高く、どこを取っても尊敬する所しかない2人。

そして魔族の星に魔力を持たない者など少ないだろうに、その少数の為にわざわざ親切設計の魔法具を作る優しさ。

きっとこの2人が治めるターフェアライト王国は、優しい国だろう。

アウインは、今日すぐにでも婚約者に移住の相談をしようと心に決めた。


アウインがひっそりと決心していると、ユークレースは突然ポチッと通信機のボタンを押した。

すると、ピラミッドの頂点から光りが浮かび、映像が映し出された。


『ユーク!・・・と、あなたは確かカルサイト王国の騎士?確か名前は・・・アウインだったかしら?』


映像に映ったのは、ユークレースが愛して止まないベリルである。


「ああ、私の愛しのベリィ!」


「べ、ベリル王妃様!私なんかの名前を覚えて頂けていたとは!」


『ユーク、あなたやっぱり召喚されていたのね?見覚えのある魔法陣が出たと思ったらユークが突然消えてしまって、まさかと思っていたのだけれど・・・もう召喚出来ないようにしたはずなのに、また聖女召喚を行ったの?・・しかもユークが聖女の判定を受けるなんて・・・』


「違うよ、私のベリル。今回は勇者召喚だったそうだ」


「ベリル王妃様、またご迷惑をお掛けしまして・・・申し訳ありませんでしたぁ!!」


『勇者・・・?あら、ふふふっ。勇者なら納得ね。ユークはわたくしにとっては勇者様ですもの』


ふふふと微笑みながら通信機越しのユークレースを見つめるベリルの瞳には、ユークレースへの愛しさが溢れている。


「ベリル・・・っ!今すぐ君のもとへ帰る!アウイン、決まったら知らせてくれ。ではまたな」


「あっ、は、はい!」


ヒュン。


『あら、ユークったらせっかちね・・・「ベリィ!」きゃっ・・・おかえりなさいユーク、わたくしの勇者様「ただいま、私の愛しのベリィ」』


今消えたばかりのユークレースは、通信機の向こうでベリルを後ろから抱きしめていた。


そして見つめ合うと、お互いの瞳が甘さを滲ませてゆき、口付けを・・・


ポチッ。


「あっ、あぶねぇ!美形過ぎる夫婦とかヤバい!ヤバいよ!・・・よし、早退してルチルに話に行こ」


アウインはピラミッド型の通信機を、なんとかポケットに入れると、城を後にした。




ちなみに、早退して婚約者ルチルの元へ向かったアウインは、倒れたままの王妃達の存在をすっかり忘れており、イカにかけた氷魔法が解けるまで(ユークレースが時間経過で解けるようにしていた)、デカタコもブタもそのまま気を失っていたらしい。


お読み頂き、ありがとうございました!

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