天秤
−−道にて
一言も喋らず、じっと座っている者が居た。
それを見ていた者は、なぜその人はじっとしているのか疑問に思った。
「すいません。なぜ動かないの?」
『動く訳にはいかない。』
低い声が響いた。
「え…。すいません。なぜですか?」
『私が動くと、世界のバランスが崩れるからだ。』
男は動かない。
『全ては関係性だ。それを私は知っている。つまり私が動くと、世界が動く。他の者は、その事を知らぬのだ。愚かだ。』
それから100年が経ち、今、彼はもうそこに居ない。
あの時彼に質問をだした者は、まだ一応生きていた。
「ああ、つまり自分を殺せなかったんですね。」
こう言うと彼は何も喋れなくなったので、じっと座った。
近くを通る者はほとんど無かった。
END