2.『彩』とギルドアプリ
自宅に帰りつくと、時刻は午前10時を指していた。かなり早い帰宅である。
昨夜千影さんから連絡が入り、「武器の調整は終わったがもう一度だけ事務所に来てほしい」と言われ、今日も千影さんの事務所に行く事になっているのだが、ギルドにどれだけ時間が取られるかわからないので、約束は午後以降という事にしてある。
千影さんの方も知り合いの住職から頼まれ事していて、午前中に行ってくると言っていたので、はやくに事務所を訪れても誰もいないだろう。
緊張が解けたからか眠気が襲ってきたので、少し仮眠を取ろうとベッドに横になった。
しばらくして私は息苦しさで目が覚めた。何かが胸の辺りに乗って押さえつけてくる、そんな感覚だ。久々の金縛りだろうか。
目を開けると、女の子が乗っかっていた。
「主さまーおかえりー」
「ただいま、彩」
この彩という少女は『刃』に宿っている付喪神が人型を取った時の姿だ。名前は文太に貰ったのだそうだ。まだ起きていられる時間は短く、一日の大半は『刃』の中で眠っている。
文太と共に戦っていた頃は、ずっと人型を取っていられたそうだ。
今日はギルドに行くので家で留守番してもらっていた。
『刃』を懐に隠して電車に乗るメンタルは持っていなかったので、意思疎通が出来るようになって本当に助かったと思う。
まだ家を出る時間には早いので、ギルドアプリを起動してみる。
どのような依頼が出されているのか、気になっていたのだ。
ギルドに登録した経緯を考えれば不謹慎だと思われるが、ゲームみたいで少しワクワクしている。
ギルド建物内には依頼掲示板も他の登録者の姿も無かったのは、実は全て電子化されて、アプリによってやり取りされているからだ。
ギルドの事で何かわからない事があってもアプリを見れば全て解決するだろう。
ちなみにギルド幹部による紹介状については、ギルド幹部が二級以上の実力があると認めた者に紹介状を出す制度だと書かれていた。
登録者の階級は、上から『特級』『一級』『二級』『三級』『四級』となっており、四級が全体の65パーセント、三級が25パーセントで、二級は残り15パーセント内の実力者という事になる。
なんか、初心者の私がギルドに誤解されている気がするのだが、私の今の階級欄には四級と表示されている。二級スタートではないらしい。それならまあいいか。
四級には、たいした依頼が表示されないらしいが、今受けられる依頼を上から順に表示してみる。
『心霊スポットに行ったら体調が悪くなったので一万円で除霊してくれる人を探してます』
『家を建て替えるので地鎮祭をしてください。報酬五万円』
『秋祭りで舞を踊ってくれる巫女を派遣してください。十万円から相談応』
どこかのネット掲示板で見たような依頼が並んでいた。
……私のワクワクを返してほしい。
ちなみに地鎮祭の依頼は源さんと言う大工さんが受けていた。
源さんは子供のころから霊感が強く、大工になってからは地鎮祭と家の建築をセットで請け負う事で有名な人らしい。
……私にはどうでもいい情報すぎる。
秋祭りに樹里と菜子を派遣して二十万円で交渉できないかという不穏な考えが頭をよぎったが、彼女たちにそんな頼みが出来るはずもない。
依頼はとりあえず置いといて『雑談掲示板』というのを開いてみる。
『つっちー : なぁ、聞いたか。幹部の紹介で登録したばかりの新人が初日に700ポイント叩き出したらしいぞっ!』
『ネコミミ : その新人さんの話ならわたしも聞きました。なんでもその人『邪神』と『十鬼』を従えているとか……』
へぇー世の中には凄い新人がいるもんだな。……ん!?『邪神』って樹里の事か?『十鬼』は菜子?……ま、まさかな…………
おそるおそる現在のボイントを確認してみる。
『あなたの現在のポイントは700ポイントです』
なんで……
700がどのくらいの数字なのか調べてみた。
一級依頼の上限が500ポイント、特級は510ポイント以上と書かれていた。
特級依頼のポイントだった……千影さん、一体何してくれてんの!
てか、目立ちたくないんだってばよぉぉおおお!!




