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神木の精と結界を守る鬼  作者: 貝石箱
第一章 神木の精と結界を守る鬼
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日常② 物置の怪


 最近何かがおかしい。


 何がと言えば、例えば、使いっぱなしにしていた物が、勝手に所定の位置に戻っていたりとか、床に飲み物をこぼして雑巾を取りに行き、戻ってくると既に床が綺麗に拭かれていたりとか……。


 本人たちは否定していたが、最初は樹里か菜子がやってくれていたのだと思っていた。


 だが、二人が家にいないときにもこれらの現象は起きる。


 実際、物がなくなったりとか、壊されたりとか、悪い事が起きているわけではないのだが、これはこれで気味が悪い。


 一番最初におかしいと思いはじめたのは、菜子と二人で出かけた日の事だ。

 帰りは途中で樹里が合流して三人になったのだが、帰宅して、買い物した荷物がまだ届いていないのかと思えば、既にリビングのテーブルの上に配送票が置かれ、荷物も菜子の部屋に運び込まれていた。


 途中から合流した樹里が怪しいのだが、本人が受け取ってはいないというので、少しおかしいとは思いつつ、それ以上は追及することはしなかった。


 そして、その日から徐々に家の中の異変に気付き始めたわけだが、最初はほんの些細な事だったと思う。

 ほんのわずかに物の位置が動いていたりとか、片付けた物が自分が片付けた時よりも綺麗に揃えられていたりとか、消し忘れたと思っていたトイレの電気が消されていたり、一見、気のせいと思いがちなことであっても、こちらが注意深くしていると気付く事だってある。


 よし、確かめてみるか。


 まず、一度掃除機を出してからそれを雑に収め、次にトイレの電気を付けてその場を離れ、後は…………そうだな、菜子が大切にしているセーラー戦士のフィギュアを『安心してください、はいてますよ』のポーズにしてから自分の部屋にこもった。


 ――三十分後。

 なんということでしょう。綺麗に収納された掃除機に消されたトイレの電気は、まるで誰かが自身の存在をアピールしているかのよう……。

 フィギュアはそのままだったが、菜子が帰ってきたら私が怒られそうなので、戻しておいた。


 これで、この家には今、私以外の何かがいることが証明された。


 それは、最近、幽霊など色々なモノが見えるようになった私にも見えない何かだ。


 だが、妙なのは何かが家に入り込んでいるのであれば、うちの同居人たちが放っておくはずはないのだ。


 なので、同居人二人にきいたところ、


「おかしなものは何もおらんようじゃが……」


「ウチも、怪しいもんは何も見てへんなァ」


という具合なのだ。


 だが、確かに何かがいる。



 その時は特に気付かなかったのだが、これは考え方を変えれば『おかしなもの』や『怪しいもん』以外は居るという事になるのではないだろうか。


 よし、これは二人が帰宅したら、もう一度問いただしてみるか。


 とりあえず、この件は二人が帰るまではお預けだな。




 では、今日はこれから兼ねてから予定していた物置部屋の整理だ。もういい加減、夏物を納めて冬物を出さないといけない時期である。

 夜など、日によっては寒さを感じる日もある。そんな折、なぜ私の部屋に扇風機があるのだと思ったのは記憶に新しい。


 そういえば、一階の奥の部屋が物置部屋になってから、一回も足を運んでいない。足を運んでいないので、当然掃除もしていない。


 ホコリ大丈夫かなぁ?あまり吸い込みたくないし、溜まってなきゃいいけど…。


 まずは一度、部屋の状態を確認すべく、恐る恐る部屋のドアを開けてみた。


 ふぅ、怪しい人影もないし、特に何もいないな。


 いや、部屋の中に置かれている物の状態などを確認しに来たのだが、ドアを開ける瞬間に頭をよぎったのだ。あっ、やばいかもって。家に確実に何かがいるという確信がありつつも何も見ていないという事は、普段あまり足を踏み入れない場所に、その何かがいる可能性が一番高いのだ。


 ともあれ杞憂で良かった。


 部屋はかなり広く、隅の方にはビリヤード台や卓球台、壁にはバスケットゴールやボルダリグの出来そうな突起物のある場所もある。


 何だこの部屋?遊技場かなんかか??……ここ、普通の民家だよな?


 ……というか私の家だったわ!! まったく、祖父の趣味にも困ったものだ。



 気を取り直して再度部屋を見渡す。


 電気製品などは右の壁に揃えて置かれ、衣装ケースやその他・雑貨品などは左の壁に整理されている。


 部屋は特にホコリっぽいという感じもなく、物も意外と片付いている。

 とはいえ、たまには窓を開けて部屋の空気を入れ替えたほうがいいよな。


 そう思い、部屋に入ってすぐ、何もないはずの場所で何かに躓いた。


「……きゃ!」


 ……え!?女性の声??


 なんとか転倒を免れ向き直るも、やはり何もない。綺麗な床があるだけだ。

 ありえないが、もしかしたら私に見えない何かが存在しているというのだろうか。

 いや、誰か……なのか。足になんか当たった時、女性の声がしてたわ。


 近くで屈みこんで目を凝らしてみるが、やはり何も見えない。

 凝らして見たからと言って、幽霊などが良く見えるかは謎だ。

 見えないだけに既にその場から移動していても全くわからないのだが。


 いっそなかった事にしてしまおうかと考えあぐねていると、突然、物が浮いた。

 大小関係なく、部屋にある物という物、その全てが浮き上がったのだ。



 ポルターガイスト? なんか、やばい予感が……



 やはりというか、近くに浮いていた椅子が、私をめがけて飛んできた。

 それを身をかがめてかわすと、次に本棚の本が次々飛び出して襲った来た。

 かわしきれなかった物は手で払ったり、腕でガードした。結構痛かったが、本など所詮は紙だ。


 だが次に飛んできたものはマズかった。


 ハサミにカッターナイフ、小刀、彫刻刀と、刃物のついたものが飛んできた。


 ……これらを全てかわせと!? 無茶振りすぎるだろ。一つ二つなら叩き落せるかもしれないが、刃先に触れてしまえば、痛いでは済まない。


 最近、危険な目にあう頻度が多すぎる気がする。

 私は住人で唯一の非戦闘員なのだが。

 故に一人では外出は控えていたのだが。

 私の家は安全地帯ではなかったのか。

 これも何かに伴う弊害なのだろうか。


 ふと、床に転がっている椅子が目に入る。椅子を拾い上げると、正面に構える。


 これまで飛んできたものは、どれもただ真っ直ぐ向かってきた。あまり器用にコントロール出来ないのか、それならこれでいい。


 正面から飛んできた攻撃は、場所や角度に多少違いはあるものの、次々飛んできたものを全て椅子で防ぎきった。小刀と彫刻刀は椅子に刺さっている。


 次の攻撃を待たずに、先程躓いた場所へ椅子を投げつけると、ドアの方へ向かって駆け出した。


 おそらく『見えない何か』の能力は広範囲には及ばない。

 及ばなかったらいいなぁ~。

 部屋を脱出すればきっと大丈夫なはずだ。

 なんなら家の外まで逃げてもいい。


 それに、見えないものとは戦えない。

 いや、もともと私は戦えない。

 へんに期待しないでほしい。


 椅子は、そのまま持って逃げるわけにはいかないので投げただけだ。

 当然『見えない何か』がずっと同じ場所に留まっているなどとは思っていない。



 だが……


「……ぐはっ!」


 私の投げた椅子が直撃したらしい。


 そして、『見えない何か』は、ようやく私の前に姿を現した。




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