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神木の精と結界を守る鬼  作者: 貝石箱
第一章 神木の精と結界を守る鬼
13/71

13.ひっぱりすぎて、おこられそうなので、黒い影と対決します2

『樹里』視点です。


 黒い影の気配がかなり近づいてきている。

 この時、樹里は既に引き返せないところまで来ていた。

 何があろうと、もう住処へ、あの結界の綻びへと飛び込むしかない。


 だが、住処まであと少しというところで、一つの疑問が樹里の脳裏を過ぎる。

 ここまで来て、まだ一つも罠がないのだ。

 偶然避けてきたというわけでもないだろう。


 最初は儂を結界に近付けさせない為、幾つもの仕掛けが施されておると思っておった。

 だが、実際はそうではなかった。

 残りの距離から考えると、仕掛けられる罠は一つ。


 もし、最初から罠は一つだけで充分だと考えられていたとしたら?


 儂ならどんな罠を仕掛けるであろうか?


 まず、即死級の罠は無いな。理由としては、まぁ勘じゃのぅ。結界を張った奴は儂を殺そうとしておるわけではない気がするのじゃ。

…………その割には、今、危険な者が出鱈目な速度で近付いておるが、まぁ良いか。


 そして、攻撃系の罠は全て除外しても良いであろう。結界を張った奴は儂が力を失っていることを知っておる。そういう結界であるからじゃ。儂を殺さない事が前提であれば、ダメージの低い罠しかつかえない。罠が一つであれば、わざわざダメージの低い罠を使う意味がない。

 ダメージの低い物であれば、手前から無数に設置するのが、儂の心を挫くにしても、より効果的であるからじゃ。


 となると、やはり…………儂を拘束する為の罠。


 例え何があろうと、もうあの綻びに飛び込むしかないとわかっておったが、儂はそう考えずにはおれんかった。



 そのわずか数秒後、校舎横の通路を抜けてきた黒い影が樹里の視界に入ってきた。

 その距離、十メートル。対し、樹里が住処へ辿り着くまで、あと三歩程。

 黒い影は体を伸ばして、その差を一瞬で詰めると、そのまま樹里を呑み込もうと三メートル程に体を広げ、被さるように襲い掛かった。


 樹里とてこのままやられてやるわけにはいかない。

 この時、樹里は右手を黒い影へと突き出し、残るすべての力を開放する。


 く、全てを絞り出してでも、この一瞬だけは止めてやるわ!!!!!


 右手から無数の枝や蔦を伸ばし、黒い影との間に壁を作り上げた。不格好で小さいがこれでいい。直後、壁は樹里の身代わりとなり黒い影に呑み込まれ、その役目を終える。

 その際、樹里の右腕も半分ほどまで黒い影に呑まれた。

 それは、たとえ一瞬とはいえ、樹里にはもう黒い影を完全に防ぎきる力が残されていなかったからだ。


 ……やはり、力が足りぬか。


 だが、一瞬の時は稼げた。


 樹里は自身の右の腕を根元から切り離すと、地面を蹴った。

 そして視界の片隅に、つい先程まで己の右腕であったものが、全て黒い影に呑み込まれる様を見届けると共に、住処へと飛び込んだ。











 ―――――ごろん、ごろん、ごろん、がつんっ!!



 ――アウチッ!…………い、痛い……あっ、これ、知ってる! 我が家の天井じゃ……無事、帰れた!?



 着地の事など一切考えない思い切りのよい飛び込みにより、派手に床を転がり壁に頭を打ち付けた。


 ここは、紛れもなく樹里が住処と呼んでいる部屋で、中央に囲炉裏の置かれた日本の伝統的な和の作りになっている。

 木の中にこれほどのスペースが実際にあるわけもなく、特殊な空間になっている為、大きさは自由に変更可能である。


 壁に頭を打ち付けて忘れておったが、罠は無かったようじゃ。しかし何の仕掛けも施されておらんというのも変じゃ。うっかり、仕掛け忘れたのであろうか?

 …………と、のんびりしておる場合ではなかった。


 周囲の壁に外の様子を映し出して見る。

 すると、つい先程、樹里が黒い影に襲われた辺りで、縦も横も数倍のサイズまで体を広げた黒い影が、神木を呑み込もうとしている所が映し出された。


 これはマズイのぅ……


 樹里は、住処にさえ戻れば力も戻り、後はどうにでもなると思っていた。通常であればその考えで間違っていない。だが、力とて一瞬で戻るわけではない。相手がそれまでに『神木ごと丸呑み出来るような化け物』であれば話は別である。


 この者は、まだ昔の事を根に持っておるのであろうか? よし、ここは本人に直接聞いてみるか!


「黒闇天よ!!おぬし、まだ儂に昔やられたことを――」


「――黙れ!!キサマももう終わりだ!死ね!!」


 ……あぁ、うん、儂は決して煽ったわけではない、とだけ言っておこう。


 適当に話を伸ばして時間を稼ぐのは無理そうじゃ。儂が喋ると時間ではなく、ヘイトを稼ぎそうな気がする。


 黒い影が両手を広げるようにして神木の周囲を取り囲むと、その幅を徐々に狭めてくる。


 まだ、力が……マズイ、もう呑まれそうじゃ。何かないか……


 …………ん!? アレは、


 ぼんやりと光を発する神木の葉。樹里にとってはこれまで幾度となく見てきた光景で、最初は特に気にしてはいなかった。だが、相手が黒い影なら……


 光っているのは葉っぱではなく、発光虫と呼ばれる蟲で、約三千種いると言われる発光虫の中でも、こいつは別名、『闇食い』と呼ばれている。その名の通り、闇を食らう。


 この種は、もうこの辺りには生息しておらんと思っておったが、まぁ良い。



 実はこの発光虫こそ、結界を仕掛けた人物の施した『仕掛け』なのだが、樹里は知る由もない。

 先程の、結界を張った人物は樹里を殺そうとはしていない。という思考からたどり着けそうな答えではあるのだが。



 力は完全には戻ってはないが、木を揺する程度ならば今の儂でも問題ない。じゃあさっそく、



 ゆさ、ゆさ、ゆさ



 ぱらぱらぱらと、葉っぱから振り落とされた発光虫が黒い影に降りかかる。

 黒い影が狭まるのが止り、蟲を嫌がっている気がする。


 発光虫は暫くの間、黒い影の闇を食らうと、闇に呑まれて消えてしまった。


 では、もう一度、



 ゆさ、ゆさ、ゆさ、

 ゆさ、ゆさ、ゆさ



 ぱらぱらぱらぱらぱらぱらと、黒い影に降りかかり、暫く闇を食らって、消えていく。



 つぎ、ラスト!



 ゆさ、ゆさ、ゆさ、

 ゆさ、ゆさ、ゆさ、

 ゆさ、ぐらっ、ぐらん、ぐらん



 うおっ!だんだん強く揺すってたようじゃ!


 ぱらぱらぱらぱらぱらぱらばさっばさっと、大量の発光虫が黒い影に降りかかる。



 揺する途中に完全に力が戻ったようだ。

 失った右腕も、力が戻る過程で完全に再生した。



「蟲で弱っておるところ悪いが、もう終わらせてもらうぞ!あやつの事も心配じゃしのぅ」


 言い終わると同時に樹里が本来の力を開放すると、神木はこれまでにない強烈な光を放つ。光は結界の鎖を断ち切ると、一瞬で小学校のグラウンドを光で包み込む。そしてその光は一気に街全体へと広がっていった。


 やがて、光が収まった後には、黒い影の姿も消えていた。

 だがそれは、消滅したわけではなく、何者かが一瞬で回収して行ったようであった。

 まぁ、完全に力が戻った今、次はそう後れを取ることはないだろう。


 そして、「儂のことを助ける」などとぬかして、儂に協力してくれた、あやつの気配を急いで探したが、既に鬼の気配と共に消えた後であった。






お付き合い頂き有難うございました。次の最終話で一旦終わりますm(__)m

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