NO3 接触
(それにしてもまさか憑き人がこの時期に現れるなんて………。早いわね…今回は。)
それはおよそ人とは思えない表情を浮かべ凍っていた。
シータは凍ったそれの片腕を千切りその場を後にした。
〜栄司の家〜
「あーこれ、ヤバイな。けっこう伸びてるな………」
栄司は鏡に映った自分の顎を撫でながらなんとも言えない顔をしばらく見ていた。
使用した魔法の濃度によるが今回は二時間ほどで元に戻る程度で済むだろうと踏んでいる。
「変な遺伝ですね」
「やかましい」
「申し訳ございません。あっ金子様が立ち去られた後不審な女が1人金子様を付けているのを確認しました」
「やっぱりな。素性は判明したか?」
「はい。街の繁華街にある帽子屋HATMANに入っていくのを確認しました。」
「帽子屋……?そんな頭の形綺麗か?俺」
「まあ顎よりかは綺麗だと…」
「夕飯抜きな」
「……はい。」
「まあいい、とりあえず少し調べてみる」
栄司自身少し確認したい事があった。
夜ご飯を作り終わった頃、顔の長さが元に戻った。
作ってる最中飛んできた油が顎の先端に接触して少し火傷したことは悔しいので内緒にしていた。
そして9時半を回った頃、バイト先に向かうためQDと共に家を出た。
金子栄司は人と少し違う環境で育ってきた、
日本には古来より妖怪といわれるものが数多く存在していた。妖怪とは魔力濃度が一定値を超えた事により生物が変化したものであった。その魔力の濃さは個々により多様な能力を生み出す。あるものは幻覚を見せて人の家でくつろいだり、あるものは首を長くしたりと様々である。
栄司は意識がある頃には親戚の家で生活していた。親戚は両親について話してくれなかったが、小さい頃から様々な怪奇現象に遭遇したりすることから自分の両親は普通の人と違うのかもしれないという疑問があった。
そしてその疑問は小学校の放課後、始めて魔法を使った時、自分の瞳の色が変わった事から確信に変わった。
また、親戚の家において魔法の特訓をする際に氷魔法に秀でて特化している事が分かった。
それらの事から栄司は両親のどちらかもしくは両方とも氷に関係した妖怪であると予想している。
あごや鼻が伸びる原因についてもその妖怪のせいに違いない、そう思いたい。主人公らしくない!
〜帽子屋 HATMAN〜
「で、この腕が俺らのお土産だと……?」
「ええそうよ。何か不服かしら?ガンマ。」
「そんなことはねえけどよ、こんなんじゃ何にも分からないぜ……。」
「あっ……。あのぉ!!僕分かります。分かると思います!!」
パソコンをカタカタさせながら眼鏡をかけた少女は自信のない声で言った。
「この腕の形状から、ただのウォッカーではなく憑き人だと思われます。そして憑き人が出たと言うことは近々ベツヘルムの星が降ってくる可能性が高いと言うことです!!」
「さすがねオメガ。私もそうだと思うわ。ベツヘルムの星……。今回こそは人間の力だけで数十年に一度の厄災。百鬼夜行に対処しなければならないわ。
なんでわざわざ私達がこれまでの犯行現場に黒い帽子を残していったか分かる?。」
「そりゃあれだろ。ブラックハットの犯行だって世間に思わせるためだろ?わざわざ面倒くさい事しやがって」
「違うわ。思わせるのではなく確信させるのよ。あくまでまだ都市伝説の一部に過ぎない謎の集団ブラックハットが実在すると信じてもらうのよ。」
「確かに、僕達でブラックハットを名乗って協力する人達を募れば、百鬼夜行に対抗できる戦力ができるかもしれない」
「さあ、さっそく戦力になりそうな人達を集めるわよ?ボス!いいですわよね?」
「……。グー、、グー。」
「ダメだわまた寝てるわもういきましょ!」
盛り上がっている3人とともに他の数名は淡々と責務をこなすべく外に出て行った。
そして、1週間後見事に帽子屋のその組織は50人を超える武装集団になった。




