#8 食糧調達
ドイルの心臓が取り出され、和也の目の前に差し出された。
うぷっ
これは慣れない・・・ドイルの、血みどろの心臓がそのまま目の前に・・・
相性の良さによって、味は保証されているとのこと。
いやいや、そんな味の話しなんて今それどころじゃないだろ!
でも不味いよりは・・・
和也はここにきて混乱していた。
頭で、言葉では理解しているが身体が言うことを聞かない。
せめて火を通して良いのであれば・・・いや、ドイルの心臓だと言うことを考えるとそれもなんだか違う気がする・・・
ええい、なるようになれ!
カブッ
和也はドイルの心臓にかぶりついた。
口の中で心臓の膜がプチっと弾け、魔力が混じった血が喉を滑る。肉質は噛む必要がないほど柔らかく自然ととろけていく。
あ〜、何という上質なハツなのだ。
とろけるハツなんて食べたこと・・・
和也はなんてことを感じているんだと自責の念に捉われ始めた次に襲ってきたのは激しい悪寒だった。
「ゔ・・・ぐぁ」
痛い、苦しい、寒い、熱い、痒い
もはやあらゆる苦痛と言う苦痛が襲ってきている感覚
それが口から始まり喉を通り胃に到達。
そこから指先、足先、頭へと広がった。
「テン、ヒールを!」
「ラシルさん、ダメです。魔力干渉してしまい、今の行為が無にきすだけでなく、下手すると拒否反応が増幅してしまいます。和也くんを信じましょう!」
見ていることしかできない。
なんて不甲斐ないのだろう。
ラシルは歯痒さを握りつぶすように拳へと力を込めた。
「テン、私はここで和也を見守りたい。でもみんなの食糧を確保しなきゃ。」
「分かってますよ。私とカイン、ミネルヴァを連れて行きます。念のためダスティンは置いて行きます。」
周辺はあらかた物色が済んでいた。
少し遠くに行く必要があるな。
テンは2日で戻ると言い、全異人メンバー5人のうち3人で食糧調達へと出かけた。
道中は以前から食糧調達がてらヘルを倒していた場所だっただけに、ヘルの数はパラパラといる程度で少なかった。
テンたち一行は半日ほど歩いたところで小さな町を見つけた。
ここに食糧があれば新たな拠点に良いかもしれない。
「ヘルがいるかもしれない、そうそう出くわすものでもないが、もしかするとヴァリアントも。まとまっていこう。言うまでもなく、無理はせずいざと言うときはすぐ引くぞ」
テンの号令で民家や小さなスーパーを回り、缶詰や乾パンと言った非常食を探した。
不思議とヘルはいなかった。
少しくらいいると思っていたが・・・いや、前回はヴァリアントがスライム型のヘルを狩っていたため少なかった。
今回ももしかすると・・・
テンの頬に冷たい水がながれた。
「副隊長!」
ミネルヴァが叫んだ。
テンは何事かと振り向きミネルヴァの元へ駆けつけた。