#6 B地区マーケット奪還 ー公園エリア④ー
人型ヴァリアントの能力は計り知れない。
ヘルが覚醒し、更なる膂力と知能が加わり手が付けられない。
ヴァリアントにはこれまで多くの仲間が犠牲になってきた。
転移前の異人の世界には数百人の戦士が集まるギルドが存在していた。
百戦錬磨の集まりだ。
ドイル、ラシル、シードル、テンはそのギルドのメンバーだった。
そのギルドの名はIróas symposion(英雄達の狂宴)
とても強く、賑やかで、暖かい家族の様なギルドだったそうだ。
そして、今はもう4人を除いて生きてはいないだろうと言うことだった。
ヴァリアント5体
たった5体のヴァリアントに壊滅させられたのだ。
「ちっ、足が震えやがる」
ドイルはシードルの安否が気になりつつ、過去のトラウマが蘇る。
あんなもんで死にやしないはずだ。
しかもこいつはあの時のヴァリアントじゃない。
恐らくここの住人が変異したのだろう。
さっきの犬型のヘルは飼い犬ってところか。
スライムが少なかったのは、狩をさせていたからかもしれない。
「チロ・・・チャン・・・ヲ」
人型ヴァリアントの手をドス黒い光が包み込む。
「ニク・・・イ・二・・ク・・イ」
あれを喰らったらヤバそうだ
「一旦引け!」
ドイルはみなを下がらせヴァリアントの前に立ちはだかった。
「打て!」
ドイルの背後から一斉に複数の矢が放たれヴァリアントに命中。
続いて第一部隊のメンバーが一斉に槍や剣を突き立てる。
「イタイ・・・イタ・・イ・・ドウ・・・シテ・・・」
手に集まったドス黒い光が更に大きくなっていた。
「お前ら、どうして。下がれと言ったはずだ!下がれ!ダメだ!」
ドイルが部下の面々を引き下げようと掴み、後ろへ投げ飛ばす。
ヴァリアントはドス黒い光が集まった手を前方へ差し出した。
その集まった光から伸びる黒い線が辺りを埋め尽くす。
その光はあらゆる物体を貫いた。
ドイルの体はもちろんのこと、後ろに放られた第1部隊の部下、更に後方の弓を放った第3部隊の面々まで。
「ドイルー!!」
駆けつけたラシルは遠目からドス黒い光の光景を見て叫んだ。
うそだ、うそだ、うそだ・・・
「チロ・・・チャン・・・ドコ?オサンポ・・・イキマショ・・・」
ヴァリアントは去った。
ラシルが駆けつけた場所には数多の亡骸が横たわっているだけだった。
ラシルはドイルの元へ駆けつけ、抱き寄せた。
「間に・・・合わなかった・・・」
ラシルは力無く崩れた。
そして、涙するでもなく、ただ呆然と亡骸を見つめていた。
程なく遅れて駆けつけた追撃部隊のメンバーも愕然とした。
ドイルの体を抱えたままのラシル。
現状の惨劇。
この数ヶ月、順調だった生活がまやかしだったことが証明された瞬間だった。