#2 世界奪還作戦
『世界の終焉』によって滅んだ現代。
近代的な面影を残しながらも、深いジャングルと化した街々。
そこには人類の生き残りを駆逐すべく異形の生物が徘徊していた。
これらは"ヘル"と呼ばれる無機質な生物。
ヘルは執拗で残虐な化け物だ。
一度遭遇すれば人の血肉を己がものとすべく、どこまでも追い回す。
その上位種とされるヴァリアント。
ヴァリアントは知能を併せ持っており、ヘルとは雲泥の差の強さを誇る。
ただし、執拗さと残虐性はヘルほどではないとされており、その全容は未だ分かっていない。
「各員整列!」
澄んだ青空にこだまする威圧的な怒声。
「本日のミッションは、B地区マーケットの奪還だ。
我が物顔で蔓延るヘルを片っ端から薙ぎ倒し掃討せよ。」
一度滅んだ世界。
そこに異人と現代人が入り混じった世界奪還組織「Fehde」(フェーデ)が誕生していた。
「和也、今日もサポートよろしく頼むぞ。」
「はい、任せてください。」
和也は主に現代人で構成されたサポートをメインとする3番隊に所属していた。
異人は『世界の終焉』の際に転移してきた異世界で暮らしていた人々。
その中の戦士とされる人々は魔法を使い、驚異的な身体能力を誇る。
Fehdeにいる戦士は数が少なく、一番隊隊長兼Fehdeリーダーのドイル、一番隊副隊長のシードル、二番隊隊長のラシル、副隊長のテンの4名のみ。
戦士には二通りのパターンがあると言う。
一つ目は生まれ持った才能として備わっているケース。
二つ目は後からヴァリアントまたはヘルの血肉を取り込み、苦痛に耐え抜けた者。
耐えぬくには素質が必要であり、素質なきものが血肉を取り込んだ場合、異形の者へと変異してしまう。
その成れの果てがヘルやヴァリアントなのだ。
Fehdeは総勢20名程度。
一年をかけて、増減を繰り返し、ようやく組織として纏まったばかりだった。
現代人で構成された3番隊には直接ヘルと戦える者はいなかった。
単純に腕力が足りず、致命傷を与えることができない。
運良くヘルと出会う前に異人と出会い、救われた者たちばかりだった。
一方で、異人はこの現代の世界を、地理を知らなかった。
異人もまた、食糧について、地理について、この世界について現代人から知識を得、相互に補い合っているのだ。
「本日が世界奪還の、Fehdeの歴史の一ページ目となるのだ。失敗は許されない。みな、心して取り掛かるように。」
地区単位の大規模奪還、Fehdeの世界奪還作戦の初陣とでも言うべき一日が始まる。