プロローグ
――1905年。
森の中、人々が捕獲するために、私を大勢で囲んでいる。
ぱっと見10〜15人程が銃を持っていて、残りの10人が私を取り押さえるためか、手に軍手を付けた軽装という状況である。
「グルルル……」
「構えろ!」
私が逃げようと思い、走り出す構えを見せると、私を囲んでいた人間の内、銃を持っていた人は私に向けて銃を構え、軍手だけ装備している人は銃を構えている人の後ろに退いた。
「…………」
「グルルルル…………」
私は人々を、いつ攻撃されるか分からない状況の中、威圧を与えるためにギラリと睨み付ける。が、人々はそんな事では全く怯まず、逆に銃を構えたまま近付いてきた。
ザッ!
私は人間が近付いてきた瞬間、走り出した。
人間達からするとちょっと予想外だったのか、少し戦く。しかし、私はその人間が見せた一瞬の隙をついて、全力で走り出す。
いつもだったら襲ったりするのだが、今回は数の差が大きすぎる。これでは圧倒的に不利である。
私は走る速さだけで言えば、群れの中で断トツトップだった。
そんな私が全力で走れば、逃げられないことも無いだろ――!?
「仕留めたぞ!」
何が、起きたんだ……?
私は状況を確認するために周りを見渡す。
しかし、そこにあるのは仕留められた私を囲むようにして見つめる人間達の姿だけで、何があったのかは分からなかった。
まあいい。私もこれで終わりか……。
なら、最後に神に頼もう。
『人間になってみたい』と。
ああ。意識が遠ざかってゆく。
これが死というやつなのか……?
そう思ったのが最後、私の意識はついに途切れた。
「クルルルル……」