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それでも、私は欲しかった。
ただ、それだけだった。
「っ~、このっ!イカれ女が!!!」
空から降ってくるイケメンは、そのイケメンたる御尊顔に、怒りを顕にさせ、この世のものとは思えぬ言葉を発した。
そのままのスピードで、私の元へと落ちてくると思われたイケメンは、急に吹き上げた風により、緩やかに、そして優雅に私の目の前に着地した。
解せぬ。
何故に私の腕の中ではいけなかったのか。
このときの私は、そんなことを考えていた。
そんなことしか、考えられなかった。
なんたって、疲れきっていたのだから。
「……怪我はありませんでしたか?頭の足りない君」
キラキラとした笑顔を浮かべ、彼は私のほうへ話し掛けてきた。
声もイケメンだった。
何か聞きなれない言葉を聞いたような気がしたが、聞こえなかったことにした。
「え、あ、はい!この通りに、元気でございますゆえ!!!」
回らない頭で、丁寧な言葉を探しつつ、怠い体を必死に動かした。
イケメンに心配はかけられない。
なにより警戒はさせたくなかった。
私の今後に関わるからだ。
どうにかしてイケメンを持ち帰りたい。
私の心は燃えていた。
「私は上から落ちてきましたね?」
彼はそう聞くと空を見上げたり、周囲を見渡した。
現状を見定めているらしい。
幸いと言うべきか、この日、この時間は、何故か人通りがなかった。
「え、あぁ、そうなりますね…?」
私は少し遅れて、そう答える。
彼はその答えに、不服だったのか、少しばかり顔をしかめた後、私の服装と彼の服装を見比べ、このときの私の頭では到底考え付かないようなことを、述べたのだ。
「どうやら私は、元居た世界とは異なる世界へ来てしまったようだ」