part2『よし、帰れ(後編)』
「……さて、ヒーローさんそろそろ、帰ってくれるか?」
「……良いじゃん、別に」
「……そろそろ、夜中になるぞ?」
「私強いから問題ない」
ヒーローは、ファミレスから帰ってきてからというもの全く帰ろうとしない。
それに、強いからと言って夜中に女の子が帰ろうとするなんて親御さん心配するだろうに。
「……そろそろ親御さん心配してるんじゃ無いのか?」
「……私の親2人とも海外に行ってるから心配ない」
なんてこったい、親が家にいないのかよ。
「兄弟は?」
「姉貴は彼氏と一緒に海外に行ってる」
(……さて、万策尽きたか)
「そうか……それじゃあ俺は寝るから」
俺は布団を引いて寝ようとするが。
「あれ?夕飯食べないの?」
「……ちっ」
(そこは、寝ようとしてるんだから帰ってくれよ、まじで頼むから……。)
「しょうがない……か」
俺は冷蔵庫を漁って人参を取り出して根と先を切り落として素早く皮を向いて縦に細長く切って細長いコップに入れて机に置く。
「さぁ、今日の夕飯だ」
「適当すぎない?」
「……今日は動きたくないからな」
今日はファミレスまで歩かされたからな。
「私が作ろうか?」
「俺の包丁を使わなければ作って貰おうかな?」
人に自分の包丁を使われて刃こぼれとか出来たら嫌だから。
「じゃあ、良いや……」
出来れば、包丁取りに行ってもらいたかった。
そうすれば、取りに行った瞬間に鍵を閉めて寝れるのに。
「うむ、人参は生に限るな」
「……腹壊すよ?」
「昨日買ってきたから問題ない」
俺はあることに気づいて冷蔵庫を漁り始める。
「どうしたの?」
「マヨネーズつけたくなった」
俺はマヨネーズとゴマだれを取り出して皿2つを持って席に座る。
「さてさて……と」
俺は皿2つにマヨネーズとゴマだれを別々に入れて人参をつけて食べ始める。
「本当に調理師免許持ってるの?」
「……見せたじゃん、証拠を」
「……ふ〜ん」
ヒーローはそう言うと、人参スティックを勝手に食べ始める。
「と言うか、俺もお前がヒーロー免許証を持ってるの見た事無いな」
「見る?ヒーロー免許証」
「……は?」
俺は一瞬耳を疑った。
ヒーローが悪に個人情報を見せる?普通に。
「……何だって?」
「だから私のヒーロー免許証見る?証拠として……」
「……見る」
俺がそう言うとヒーローは胸元のポケットからヒーロー免許証を取り出して俺に渡す。
俺はヒーロー免許証を受け取って見ると名前の所に柏木 雪菜と書かれていて、ヒーローランクはCとも書かれていた。
「ヒーローランク?何それ?」
「あぁ、ヒーローランクは……その人の強さを表しているのヒーローランクの強さは下からC、B、Aで最後にSとなっているの」
「実績って事か?」
「ううん?その人の実力だよ?」
「……は?」
「その人の実力でランクを振り分けているから実績なんてものは無いよ?」
(すると、こいつの上にまだまだ強いヒーローがいるのか……)
「そうそう、今度からは私の事は2人の時は雪菜って呼んでね?外でヒーローとか言われてたらファミレスで白い目で見られてたから……」
「……すまん、気がきかなくて」
「それと、敬語は無しでね!今後一切」
「……なんか、今日は優しいな」
「……ってくれたから」
雪菜は俯くと何か呟くが最後の方しか聞こえなかった。
「……何だって?」
「2度は言わないよ」
そう言うと、雪菜は人の布団に入ろうとする。
「おいおいおいおい!何勝手に人の布団に入ろうとする!?」
「眠いから?」
「勝手すぎない?人の部屋だよ?男の部屋だぞ?男の布団だぞ?」
「……ん、怪人でしょ?」
「その理屈はおかしい」
俺はさっさと雪菜を布団から引き離してさっさと場所を取られないように布団の中に入る。
「さて、そろそろ帰らないのか?」
「……送って」
「そうか、気をつけて帰るんだぞ?」
「……送って」
「帰りに変な男に襲われないようにな〜」
「……送-」
「って、なんで俺がお前を家まで送らんとならんのだ!?」
雪菜は俺の発言に首を何でと言うように傾ける。
「あのな!?俺怪人、お前ヒーロー、分かる意味!」
「正義と悪?」
「そう!正義と悪なのに、なんで悪の俺が正義のお前を送らんとならんのだ!?おかしいって思わない?」
「……脅したら送ってくれる?」
雪菜は俺に見えるように握りこぶしをつくる。
「何か無性に人を家まで送りたくなったな〜」
俺は服を着替えてすぐに雪菜を家まで送って行く。
帰りに寒かったのでおでんを買って帰った。
冷たい体にはおでんは美味しかったです。