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誰がために風は吹く

作者: キアズマ

 私は風に飛ばされてしまった。

 いや、ing――現在進行形で語るべきかもしれない。

 だって、今も飛ばされているのだから。

 今、私は地上100メートルくらい上空をふわふわ漂っている。

 片手に傘を持って。

 そう、私は傘で空を飛んでいるのだ。

 道端に落ちていた日傘を何気なく手にとって開いた瞬間、突風が吹いてきて上空高く舞い上がったのだ。

 そりゃあ、最近過剰なダイエットのし過ぎで激痩せしてるとはいえ、よもや傘で飛ばされるとは……。

 そんな人間、私が史上初ではないだろうか?

 上昇気流が私を押し上げているせいか、不思議と傘を持っている手はしびれたりしない。

 それにしても、人々が私に注目しているわ。

 こんなに注目を浴びたのは、中学の頃、授業中静まり返った教室ででっかいおならをぶちかましたとき以来だわ。

 うふふ。なんだか少し気分がよくなってきたわ。

 お〜ほっほっほっ、地上の愚民どもめぇ――なんつって♪

 こんにちわ、カラスさん。

 ちょっとぉ、突っついてこないでよぉ。

 しばらくカラスとの格闘が続くも、私が『食ってやる』と叫ぶとカラスはすごすご退散していった。

 ふふ。これもダイエットで手羽先ばかり食べてた効果かしら。

 ん? あれは――⁉︎

 憧れの先輩、駒師助雄さん! 隣を歩く女性は誰?

 よもや彼女では⁉︎

 おのれ、許すまじき――私は彼と付き合いたくって、必死でダイエットした結果、激痩せしてこんな目に合ってるっていうのに⁉︎

 えい!

 私は傘を持っていない方の手で、履いていたハイヒールを女に向かって投げつけた。

 グシュ

 きゃあああ! ハイヒールの踵が女の頭に突きささったぁぁぁ!

 図らずも今、私は注目の的。公開処刑をしてしまうはめに!

 しかも、助雄さん『姉貴ぃぃ!』とか叫んでるし。勘違いで殺人を!

 んぁぁあ! もう、降りるに降りられない。どうせ、降り方わからないけど。

 もういいわ。どうにでもして。

 風さん、私を遠くの国へ連れてってぇ!








 

 ところ変わって――政府科学技術開発局。


「日傘型爆弾【ふんわりドッカン】の調子はどうだ?」

 局長はモニター前の部下に訊ねる。

「はい。被験者共に無事、敵国に到達しました」

「そうか」

 部下の報告に局長は感慨深げに頷く。

 ふっふっふっ――よもや敵国もふわふわ飛んできた傘(しかも人間を連れて)が爆弾だとは思うまい!

「今、歴史が変わる瞬間だ!」

 局長の咆哮と同時に、日傘型爆弾【ふんわりドッカン】の爆弾のスイッチが押される。



 ピッ












 不発。日傘型爆弾【ふんわりドッカン】の初号実験は失敗に終わる。


 国民二名(被験者及び被験者がハイヒールで殺した女性)の犠牲を出して。


「なぜ、失敗したんだ⁉︎」

 局長が苦虫を噛み潰す。

「やはり被験者の体重が問題だったのでは?」

「おのれぇぇ! よりにもよって、なぜあんな女に拾われてしまったんだ⁉︎」

 


 日傘型爆弾【ふんわりドッカン】の被験者(偶然拾って)――細山翔子、享年23歳。


 










 体重103kg。

もう一度、読み返してください。

たぶん、違う面白みがあると思います。

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