再発の時
その奇病は忍び寄るように発症した。
「……これが私なのか?」
全身の筋肉が衰え、身体がしぼんで皮膚がたるみ、しわだらけになる。
歯は抜け、髪は白くなるか抜け落ちた。
骨も弱くなり、怪我をしやすく、体力も低下した。
そしてなにより思考力が衰えて、感情の制御がうまくいかなくなり、怒りっぽくなったり、過度に悲観的になったりする者が続出した。
人々はパニックとなった。
発症者は病院へ運ばれ、手厚い看病を受けたが、一向に症状は良くならず、時が経つにつれ悪化していくばかりであった。
学者たちは原因を調べて驚いた。
これはかつて克服したはずの「老化」という現象ではないのか。
だがなぜ、また老化が始まったのか。
何もしないと人は老いる。
そのため誰もが若々しく、いつまでも活躍できる社会を構築したのに。
急に人々が老化したのはなぜなのか。
当事者たちに聞いても
「なにも心当たりはない」「原因はわからない」
というばかりであった。
それでも学者たちは大規模な調査を行い、老化する者の
予兆を調べた。
そして驚くべき結論に至った。
それは、ある老人がポツリと呟いた言葉がヒントになっていた。
「いつまでも活躍だなんだと言われ続けて、私はもう疲れた。この老化という現象になってからの方が、静かに暮らせているよ」
つまり老化とは精神的疲労がたまり、むしろ休みたい、労られたいという心の動きが肉体に引き起こしていたのだった。
研究をまとめた学者は、後世のために以下の三カ条を残した。
1.老化した者を労り、敬意を示すこと
2.老化した者は仕事から退くこと
3.労働と自己実現を結びつけないこと
⸻
「以上が、約三千年前の古代文明に残されていた三カ条に
書かれていた内容の解析結果です」
ついに解明された古代人からのメッセージに、マスコミや政治家が押し寄せていたが、三カ条への反応はイマイチだった。
その後メディアは三カ条の一つ目のみを集中的に伝え、残り二条については専門誌の隅に小さく書かれただけであった。
完
2025.12.31
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