タイムマシンでいこう
「やった! ついにタイムマシンが完成したぞ」
感涙にむせび泣く博士を、助手は誇らしげに眺めていた。
「やりましたね博士! まさか実現できるなんて、自分でも信じられません。
まずはどの時代に行きましょう?」
「うん、実は前から決めていたんだ。タイムマシンが完成したら、まずは1895年に行こうと」
「なぜその年なんですか?」
博士は一冊の本を取り出した。
「私の尊敬する作家、H・G・ウェルズが小説『タイムマシン』を発表した年なのだよ。私はこれを読んで、タイムマシンを発明しようと決意したのだ」
助手は再び感動した。
「素晴らしい! ぜひ行きましょう! ならば行くのは19世紀のロンドンですね」
二人はタイムマシンに乗り込んだ。
「ついに夢見たヴィクトリア朝のロンドンを、生で見ることができるのか」
⸻
「さあ、到着したぞ」
恐る恐るタイムマシンのドアを開け、二人はあっと驚いた。
目の前の世界は白黒だったのである。
それだけではない。人々の動きが妙に機敏なのだ。
「これはまるで……」
博士は手にしていたスマホで辺りを撮影してみた。
「こ、これはよく見る昔の映像そのものじゃないか!
まさかこの時代は本当に世界が白黒だったとでも? ましてや、人の動きが速いのはコマ数が少ないのではなく、本当に動きが速かったのか?」
「落ち着いてください博士! いま植木鉢を落とした老人がいましたが、その落ちる速度も速かったです」
二人は途方に暮れた。時々、視界にノイズが入る。
この時代は空間にノイズが入っていたとでもいうのか。
誰かに話しかけようとも声は聞こえない。
この時代はまだトーキーではないのだ。
絶望して、ただ時が過ぎていった。
日が暮れ、人々は家路につき、街は静かになった。
二人はただ、その様子を微動だにせず見届けていた。
すると突然、世界が色づき始めた。
二人は驚いて顔を見合わせると、再び世界は白黒になった。
(動くんじゃない)
いつしか声が出なくなっていた博士は、助手に合図した。
すると世界は再びカラーとなった。
(そうか。この時代は映像は白黒だが、カラー写真はあるんだ)
いよいよ恐ろしくなり、博士と助手はタイムマシンで現代へと急いだ。
「驚きました。なんだったんでしょう?」
「まったくわからん。時空か何かが歪んだとしか思えない」
「いやあ、当時は本当に世界が白黒だったのかと、一瞬思ってしまいましたよ。
でも現代なら気づきませんでしたね。映像も高画質で、見分けがつきません」
「さらに大昔に行っていたら、絵の世界だったかもしれないよ。いや、恐ろしい」
⸻
現代に戻り、二人は愕然とした。
動物がしゃべり、人が空を飛び、同じ顔の政治家があちこちで真逆の主張をしている。
UFOが空を飛び、一部の男女は顔の半分くらいが目となり、辺りの空間が歪んでいる。
人々はそれを互いに偽物だと罵り合っていた。
助手はポツンと呟いた。
「フェイク動画だ」
完
2025.12.31
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